レンチウイルス IPTG誘導型shRNAノックダウンベクター

IPTG誘導型shRNAノックダウンベクターの概要

レンチウイルスIPTG誘導型shRNAノックダウンベクターは、多種多様な哺乳類細胞株でターゲット遺伝子の一時的なノックダウンを達成するための非常に効率的なシステムであり、細胞の発生または細胞の生存に不可欠な遺伝子を研究するための効果的なツールです。このシステムは、細菌のラクトースオペロンに由来するLacI(リプレッサー)タンパク質とLacO(オペレーター)タンパク質間の相互作用を利用して、ラクトースアナログであるイソプロピル-β-D-チオガラクトシド(IPTG)の存在下および非存在下でshRNA発現を調節します。

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VectorBuilderのレンチウイルスIPTG誘導型shRNAノックダウンベクターは、LacI配列と、LacOエレメント(U6 / 2xLacO)を持つ改変型ヒトU6プロモーターを持ちます。目的の遺伝子(GOI)をターゲットとするshRNAを、改変型U6プロモーターの下流に配置し、さらにもう1コピーLacO配列をshRNAの下流に配置します。。IPTGの非存在下の場合、LacIはLacOエレメントに結合して、shRNAの転写を抑制します。 IPTGの存在下では、LacIはコンフォメーション変化を起こし、LacOに結合できなくなります。これにより、shRNAがU6プロモーターによって転写されるようになります。

VectorBuilderは、よく使われる生物種に対して最適化したshRNAを、shRNAデータベースとして確立しています。これらの shRNAシークエンスのデザインには、RNAiコンソーシアムで使用されているルールも適用しています。 VectorBuilderのオンラインプラットフォームでshRNAベクターを設計する場合、データベースでターゲット遺伝子を検索するオプションがあり大変便利です。生物種を選択し、遺伝子名を入力すると、データベース上の利用可能な目的遺伝子に対する同定可能な全てのshRNA情報が表示されます。shRNA情報は、ゲノム配列およびNCBIで同定されている全ての転写アイソフォーム見大して、shRNAの位置を表示するUCSC GenomeBrowserへのリンクも含まれます。さらに、ベクタービルダーのデータベースは、ターゲット遺伝子に対してデザイン可能な全てのshRNAをノックダウンスコアの高い順にランク付けして表示てします。ノックダウンスコアが最も高い上位3種類のshRNAを試験されることを推奨します。

基礎研究で使用されるレンチウイルスベクターにはウイルスのパッケージングと野生型ウイルスの形質導入に必要な遺伝子を意図的に欠失させています。ウイルスパッケージングの際にのみ、シスでヘルパープラスミドとしてコトランスフェクションするため、このような方法で生成されたレンチウイルスは、自己複製能力がないため、研究使用として安全性を高めています。

レンチウイルスに関する一般的な情報は、ベクターの詳細解説ガイドの レンチウイルス発現ベクター をご覧ください。このベクターシステムをさらに知るには次の参考論文をご確認ください。.

参考論文 トピックス
Eur J Neurosci. 50:2694 (2019) IPTGを使った可逆的遺伝子サイレンシングの誘導
Proc Natl Acad Sci US. 112:512 (2015) IPTG誘導型 shRNAを使ったIn vivo遺伝子ノックダウン
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IPTG誘導型shRNAノックダウンベクターの特徴

当社のレンチウイルスIPTG誘導性shRNAノックダウンベクターは、第3世代レンチウイルスベクターシステムを基盤にしています。このベクターシステムは、大腸菌での高コピー数複製、生ウイルスの高タイターパッケージング、様々な細胞に対する効率的なウイルス形質導入、および宿主ゲノムへの効率的なインテグレーション用に最適化されています。 2つのLacOエレメントを持つ変異型ヒトU6プロモーターは、IPTGの存在下で哺乳類細胞の下流shRNAの高レベル転写を促進し、LacIがLacOに結合するのを防ぎます。またshRNAステムループ配列は、効率的なshRNAプロセッシングと標的遺伝子のノックダウンを行うように最適化されています。

実験による検証

当社のレンチウイルス IPTG誘導型shRNAノックダウンベクターは、図1に示すように、IPTGの存在下において非常効果的な標的遺伝子ノックダウンを誘導することを検証しています。

図 1. レンチウイルスIPTG誘導型shRNAベクターシステムによるEGFPのノックダウン。 (A)IPTG誘導型 U6型scramble(ネガティブコントロール)またはEGFPターゲットするshRNAの発現カセットを持ったレンチウイルスプラスミドDNAベクターを使ってレンチウイルス粒子をパッケージングした。完成したレンチウイルス粒子をEGFPを安定発現するHEK293T細胞に導入した。陽性細胞はpuromycin (Puro) または blasticidin (Bsd)による薬剤耐性スクリーニングを経た後、1mM IPTGを添加し、shRNA発現を誘導した。EGFPの中央蛍光強度(Median fluorescence intensity :MFI) はフローサイトメトリー(FCM)で実験区を定量した。; (B)  誘導型EGFP shRNAカセットを発現する細胞は、IPTG添加後、EGFP MFIが ~42%に低下した。 薬剤耐性遺伝子をpuromycinまたはblasticidinのどちらを持つ誘導型shRNAベクターを使った場合も、均一な結果が得られた。ネガティブコントロールのscramble shRNAを発現する誘導型shRNAベクターでは、IPTG添加後のEGFP MFIに変化は認められなかった。さらに、LacIリプレッサーを欠失する誘導型shRNAベクターを導入した細胞では、ベクターの誘導能が現れず、IPTGの添加、非添加にかかわらずEGFP shRNAによって、EGFP発現は恒常的に阻害された。

IPTG誘導型shRNAノックダウンベクターのメリット

厳格な調節と高い誘導能: LacOエレメントをshRNA下流とU6プロモーター内の二重に配置することで、IPTG非存在下のバックグラウンドプロモーター活性を最小化し、IPTG存在下での遺伝子サイレンシングを最大化します。その結果shRNA発現の厳密な調節を可能にします。

早い応答性: IPTGで誘導された遺伝子サイレンシングの効果は、最速で48時間で確認され始めます。

高いウイルス力価: ベクタービルダーのレンチウイルスベクターは、高力価でパッケージングすることができます。弊社のパッケージングサービスでは、10^9 transduction unitユニット(TU/ml)以上の力価でウイルスを回収できますが、この力価で、適切な用量を使用すれば、培養哺乳細胞に100%の効率で遺伝子を導入することが可能です。

大変広範な感染細胞指向性: ベクタービルダーのパッケージングシステムではウイルス表面に水泡性口炎ウイルス(VSV)のGタンパク質をウイルスに外套しています。VSV-Gエンベロープタンパク質は幅広い感染宿主細胞の指向性を持つため、一般的に研究によく用いられる生物種由来の細胞さらに哺乳動物以外の特定の生物種由来の細胞に、効率よく遺伝子を導入することができます。さらに、分裂細胞と非分裂細胞、初代培養細胞と樹立細胞株、幹細胞と分化細胞、接着細胞と非接着細胞など、ほぼ全てのタイプの哺乳細胞に導入することができます。また、神経細胞のように、通常のトランスフェクションでは導入が難しい細胞においても、レンチウイルスベクターならば簡単に導入することができます。ベクタービルダーのシステムでパッケージングされたレンチウイルスベクターは、ある種の細胞には導入が難しいアデノウイルスベクターや、非分裂細胞には導入が難しいMMLVレトロウイルスベクターよりも幅広い指向性を持っています。

均一な遺伝子導入: 一般的に、ウイルスによる導入は比較的バラツキが少なく、細胞間で均一にベクターを導入することができます。反対に、一般的なトランスフェクション法では、ある細胞では高コピー数、またある細胞では低コピー数あるいは全く導入されなかったりと、プラスミドベクターの導入は非常に不均一になります。

in vitro とin vivoの両システム互換性: レンチウイルスは主に培養細胞へのin vitroで導入する場合に使用されますが、生きた動物へ導入する場合にも使用することができます。

安全への配慮: ベクタービルダーは2つの工夫によって安全性を高めています。1つ目は、ウイルスパッケージングに必要な遺伝子を複数のヘルパープラスミドに分散させていることです。2つ目は、ウイルスベクターが宿主ゲノムへ組み込まれると、5‘LTRにあるプロモーター活性が不活化するようにデザインされていることです。パッケージングや導入の際に、複製能力を持ったウイルスが出現する可能性はゼロで、作業者の安全に配慮したシステムにデザインされています。

IPTG誘導型shRNAノックダウンベクターのデメリット

テクニカル習熟度: レンチウイルスベクターの使用では、ウイルス産生細胞で生きたウイルスを作成し、ウイルス力価を測定する必要があります。これらの作業は、一般的なプラスミドのトランスフェクションに比べテクニックの習熟するひつようがあり、また手間もかかります。

基本コンポーネント

RSV promoter: パッケージング細胞内で、ウイルスRNAの転写を駆動し、転写されたRNAは生きたウイルス内にパッケージングされます。

5' LTR-ΔU3: HIV-1 の5‘long terminal repeatの一部が欠失した配列です。野生型レンチウイルスの5’LTRと3’LTRのシークエンスは同じです。5' LTRと3' LTRは同方向でウイルスゲノムの両端に位置しています。ウイルス導入の際、3' LTRのシークエンスは5' LTRの上にコピーされます。野生型ウイルスでは、5' LTRはウイルスゲノムの転写を駆動するプロモーター、3' LTRは転写を終結させるためのポリA付加シグナルとして機能します。ベクタービルダーのレンチウイルスベクターΔ5' LTRは、ウイルス転写因子Tatによって促進される、LTRのプロモーター活性に必要な領域を欠失しています。プロモーター機能はΔ5' LTR上流に配置したRSVプロモーターによって代替されるため、この欠失がウイルスRNA産生に影響を与えることはありません。 

Ψ: ウイルスRNAをウイルスにパッケージングするために必要なHIV-1パッケージングシグナルです。

RRE: HIV-1 Rev response element ウイルスパッゲージングにおいて、ウイルスRevタンパク質によるウイルスRNAの核外輸送を促進します。

cPPT: HIV-1 Central polypurine tract 標的細胞への感染において、ウイルスゲノムの核内輸送を促進します。 これにより、宿主ゲノムへの組み込みが向上し、高い導入効率が得られます。

U6/2xLacO: lacオペレーター配列の2つの繰り返しを含む改変ヒトU6 small nuclear 1プロモーター。 LacIの存在下でsmallRNAの発現を抑制するPolIIIプロモーター。

Sense, Antisense: これらの配列はターゲット配列に由来し、転写されてshRNAの「ヘアピン」構造のステム部分を形成します。

Loop: この最適化された配列は転写されて、shRNA「ヘアピン」構造のループ部分を形成します。

Terminator: shRNAの転写を終了します。

LacO: Lac operator. IPTGの非存在下では、lacリプレッサー(LacI)に結合し、上流のshRNAの転写抑制を引き起こします。 IPTGの存在下では、LacIはLacOに結合できなくなるため、上流のshRNAを転写します。

hPGK promoter: Human phosphoglycerate kinase 1 gene promoter. マーカー遺伝子のユビキタスな発現を駆動します

Regulatory protein: Lacリプレッサー(LacI)とT2Aリンカーによってリンクされた薬剤選択遺伝子(ピューロマイシン耐性遺伝子など)。細胞がLacIタンパク質を発現し、また薬剤に耐性を持つことを可能にします。 IPTGの非存在下では、LacIはLacOに結合して、下流の遺伝子または低分子RNAの転写を抑制します。 IPTGの存在下では、LacIはコンフォメーション変化を起こし、LacOに結合できなくなるため、下流の遺伝子や低分子RNAを転写することができます。

WPRE: Woodchuck hepatitis virus posttranscriptional regulatory element  パッケージング細胞においてウイルスRNA安定化させ、ウイルス力価を向上させます。

3' LTR-ΔU3: U3領域を欠失したHIV-1の3 'ロングターミナルリピートの変異バージョン。これにより、ウイルスベクターが宿主ゲノムに組み込まれると、5'LTRのプロモーター活性が自己不活性化されます(ウイルス組み込み中に3'LTRが5'LTRにコピーされるため)。 ΔU3/ 3'LTRに含まれるポリアデニル化シグナルは、ウイルスのパッケージング中およびウイルスの宿主ゲノムへの組み込み後の両方で生成されたすべての上流転写物を終結させる働きをします。

SV40 early pA: Simian virus 40 early polyadenylation signal 初期ポリA付加シグナル。パッケージングにおいて、3’LTR以降のRNA転写を終結させます。パッケージング細胞でウイルスRNAの機能レベルを高め、ウイルス力価を向上させます。

Ampicillin: アンピシリン耐性遺伝子は、アンピシリンによってプラスミド導入大腸菌を選択します。

pUC ori: pUCの複製起点であるpUC oriが挿入されたプラスミドは、大腸菌において高コピー数で保持されます。