アデノ随伴ウイルス(AAV)作製
組み換えアデノ随伴ウイルス(Adeno associated virus, AAV)は、in vitroおよびin vivoの両系で遺伝子導入に用いることができるため、最も用途が豊富で広範なアプリケーションに使用されているウイルスベクターです。AAVは、多種多様な哺乳動物細胞に形質導入できる特性と、ヒトへの非病原性および低免疫原性から、最も有効な遺伝子治療用ウイルスベクターとして期待されています。
VectorBuilderのAAVパッケージングサービスは、ウイルスタイター、純度、ウイルス生存率、および均質性に優れた組換えAAVを製造するプロトコールを大幅に改良し、独自の技術と試薬を開発しました。その結果、AAVプラスミドベクター構築とAAVウイルスパッケージングの両方をご注文いただくリピーターユーザーが多く、ユーザーの満足度が高いことが特徴です。さらに2020年より、このページでご紹介しているリサーチグレードAAVウイルス作製サービスに加えて、臨床応用に向けた GMPグレードのAAV製造サービス もご提供しています。そのため、基礎生命科学研究、創薬研究そして臨床研究へと、一貫したサービスをお届けできる強みも備えています。
ご提供しているアデノ随伴ウイルスの種類
- 1本鎖AAV (single-strand AAV, ssAAV) と 自己相補型AAV (self-complementary AAV, scAAV)
- 18種の血清型(セロタイプ): 1, 2, 3, 4, 5, 6, 6.2, 7, 8, 9, rh10, DJ, DJ/8, PHP.eB, PHP.S, AAV2-retro, AAV2-QuadYF and AAV2.7m8
AAV受託作製サービスの詳細
価格と作成作業日数
サイズ | 推奨使用系 | 一般的なタイター | 最小タイター | 容量 | 価格(税抜き | 作業日数 |
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パイロット | 培養細胞 | >1012 GC/ml | >2x1011 GC/ml | 250 ul (10x25 ul) | ¥66,000 | 10-20 日 |
中容量 | 1ml (10x100 ul) | ¥85,500 | ||||
大容量 | >5x1012 GC/ml | >2x1012 GC/ml | 1ml (10x100 ul) | ¥144,000 | ||
超純粋パイロット | 培養細胞&in vivo | >2x1013 GC/ml | >1013 GC/ml | 100 ul (4x25 ul) | ¥163,500 | 20-30 日 |
超純粋中容量 | 500 ul (10x50 ul) | ¥228,500 | ||||
超純粋大容量 | 1 ml (10x100 ul) | ¥345,500 |
GC=ゲノムコピー
納品形態
培養細胞用AAVウイルス | 超純粋AAVウイルス |
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カスタムAAVウイルス | カスタムAAVウイルス |
無料: 標準コントロールウイルス
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追加購入(オプション): 超純粋標準コントロールウイルス
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既製標準コントロールウイルス
既製標準コントロールウイルスとは:カスタムウイルスをご購入いただく場合、 弊社既製品のコントロールウイルスを無料(パイロット、中容量、大容量用)または割引特価(超純粋パイロット、超純粋中容量、超純粋大容量用)でご提供しています。既製標準コントロールウイルスは、感染効率の最適化などの目的に使用していただけるコントロールウイルスです。カスタムコントロールは必要な場合は別途デザインとお見積りをいたします。お問合せください。例えば、カスタムウイルスが目的遺伝子の強制発現系であれば、コントロールはEGFPを強制発現するウイルスです。カスタムウイルスがshRNAの発現系では、コントロールはscramble shRNAを発現するウイルスです。コントロールウイルスの種類を以下に示します:
ベクターシステム | コントロールベクター名称 | Vector ID |
---|---|---|
AAV遺伝子発現システム | pAAV[Exp]-CMV>EGFP:WPRE | VB190926-1395dab |
AAV U6ベース shRNA ノックダウンシステム | pAAV[shRNA]-EGFP-U6>Scramble_shRNA | VB180117-1020znr |
AAV miR30ベース shRNAノックダウンシステム | pAAV[miR30]-CMV>EGFP:Scramble_miR30-shRNA:WPRE | VB190813-1134mnj |
AAV CRISPRシステム | pAAV[Exp]-CMV>EGFP:WPRE | VB190926-1395dab |
納品形態と保存方法について
AAVはPBSバッファーの溶液でチューブに分注し、凍結したものをドライアイス梱包で出荷・納品します。お受け取り後は、-80°Cで長期間(1年間)は安定です。-20°Cでは短期間(2〜3週間)の安定した保存が可能です。一旦解凍したAAVウイルスは4°Cで1〜2週間安定して保存できます。 AAVは他の多くのウイルス(レンチウイルスなど)に比べて温度変化に対して寛容なため、ウイルス活性の損失を最小限に抑えて数回凍結解凍が可能です。しかし、実際には凍結融解サイクルの繰り返しはなるべく避けて、融解後の分注チューブは4度で保存し、1〜2週間で使いきってください。
パイロット、中容量、大容量の納品例:
- カスタムAAV(10本のマイクロチューブに分注)
- 既製標準コントロールウイルス:無料(1または2本のマイクロチューブに分注)
- カルタヘナ法26条1項情報公開書類(メール添付)
- ウイルス品質検査証明書COA
超純粋パイロット、超純粋中容量、超純粋大容量の納品例:
- カスタムAAV(10本のマイクロチューブに分注)
- 既製標準コントロールウイルス:カスタムAAVと同量の超純粋グレードウイルスを、特価でオプション注文していただけます。(4または10本のマイクロチューブに分注)
- カルタヘナ法26条1項情報公開書類(メール添付)
- ウイルス品質検査証明書COA
技術的情報
AAV作製と品質検査
組み換えAAVの製造では、目的の遺伝子(GOI)をクローニングしたトランスファープラスミドを、Rep-capプラスミドおよびアデノウイルス遺伝子(E4、E2A、VA)をコードするヘルパープラスミドとともに、HEK293Tウイルス産生細胞にコトランスフェクトします。短いインキュベーション後、セロタイプ(血清型)に応じて細胞溶解物または上清からウイルス粒子を回収し、PEG沈殿によって濃縮します。超純粋AAV(in vivoグレード)の場合、ウイルス粒子は塩化セシウム(CsCl)密度勾配超遠心分離によってさらに空ベクターの除去と精製および濃縮されます。ウイルスタイターはAAV2ITRシークエンスに対するプライマーを用いてqPCRによってウイルスゲノムコピー数を計測します。
VectorBuilderが受託作製した AAVは次の品質検査を行い品質検査証明書を発行します:タイター測定、細菌および真菌の無菌試験、マイコプラズマ検出試験。またトランスファーベクターに蛍光レポーター遺伝子がクローニングされている場合は、HEK293T細胞に受託作製したウイルスを感染させ、感染細胞が蛍光を発現していることを確認します。蛍光レポーター遺伝子がクローニングされていない場合は、薬剤耐性によって感染細胞の生存を確認します。超純粋AAVの場合、SDS-PAGE分析によるAAVキャプシッド(VP1,VP2, VP3)の精製度とウイルス溶液中のエンドトキシンのアッセイを行います。
AAVセロタイプ(血清型)リスト
セロタイプ | 組織指向性 |
---|---|
AAV1 | Smooth muscle, CNS, brain, lung, retina, inner ear, pancreas, heart, liver |
AAV2 | Smooth muscle, CNS, brain, liver, pancreas, kidney, retina, inner ear, testes |
AAV3 | Smooth muscle, liver, lung |
AAV4 | CNS, retina, lung, kidney, heart |
AAV5 | Smooth muscle, CNS, brain, lung, retina, heart |
AAV6 | Smooth muscle, heart, lung, pancreas, adipose, liver |
AAV6.2 | Lung, liver, inner ear |
AAV7 | Smooth muscle, retina, CNS, brain, liver |
AAV8 | Smooth muscle, CNS, brain, retina, inner ear, liver, pancreas, heart, kidney, adipose |
AAV9 | Smooth muscle, lung, liver, heart, pancreas, CNS, retina, inner ear, testes, kidney, adipose |
AAVrh10 | Smooth muscle, lung, liver, heart, pancreas, CNS, retina, kidney |
AAV-DJ | Liver, heart, kidney, spleen |
AAV-DJ/8 | Liver, brain, spleen, kidney |
AAV-PHP.eB | CNS |
AAV-PHP.S | PNS |
AAV2-retro | Spinal nerves |
AAV2-QuadYF | Endothelial cell |
AAV2.7m8 | Retina, inner ear |
組織 | 推薦する AAV セロタイプ |
---|---|
Smooth muscle | AAV1, AAV2, AAV3, AAV5, AAV6, AAV7, AAV8, AAV9, AAVrh10 |
CNS | AAV1, AAV2, AAV4, AAV5, AAV7, AAV8, AAV9, AAVrh10, AAV-PHP.eB |
PNS | AAV-PHP.S |
Brain | AAV1, AAV2, AAV5, AAV7, AAV8, AAV-DJ/8 |
Retina | AAV1, AAV2, AAV4, AAV5, AAV7, AAV8, AAV9, AAVrh10, AAV2.7m8 |
Inner ear | AAV1, AAV2, AAV6.2, AAV8, AAV9, AAV2.7m8 |
Lung | AAV1, AAV3, AAV4, AAV5, AAV6, AAV6.2, AAV9, AAVrh10 |
Liver | AAV1, AAV2, AAV3, AAV6, AAV6.2, AAV7, AAV8, AAV9, AAVrh10, AAV-DJ, AAV-DJ/8 |
Pancreas | AAV1, AAV2, AAV6, AAV8, AAV9, AAVrh10 |
Heart | AAV1, AAV4, AAV5, AAV6, AAV8, AAV9, AAVrh10, AAV-DJ |
Kidney | AAV2, AAV4, AAV8, AAV9, AAVrh10, AAV-DJ, AAV-DJ/8 |
Adipose | AAV6, AAV8, AAV9 |
Testes | AAV2, AAV9 |
Spleen | AAV-DJ, AAV-DJ/8 |
Spinal nerves | AAV2-retro |
Endothelial cells | AAV2-QuadYF |
* 目的遺伝子を搭載するベクターのITRはAAV2ゲノム由来のシークエンスを使用しています。この表で示しているセロタイプ(血清型)とは、ウイルスキャプシッドタンパク質を指します。他セロタイプのITRを使ったは要相談ください(タイター非保障)。
メジャーなウイルスキャプシッドタンパク質(VP1)のアミノ酸シークエンスはここから確認できます。>>関連技術情報
ユーザーインストラクション- AAV in vitroでの使用方法
- AAV in vivo application
ご注文方法
プラスミドベクター構築とウイルスパッケージングを同時注文する場合
ウイルスパッケージングのみ注文する場合(ユーザー提供プラスミド、または弊社にストックしたベクター)
ユーザー提供のプラスミドDNAベクターからのウイルスパッケージング
ユーザー提供のレンチウイルスプラスミドをパッケージに使用する場合は マテリアルサブミッションガイドライン に従ってマテリアルを準備し、弊社に発送してください。ユーザーからご提供されるマテリアルはVectorBuilderでお受け取り後、品質検査(QCチェック)に合格することを必須条件としています。QCチェックは、マテリアルごとに14,000円からの追加料金が発生する場合があります。さらにQCチェックに合格するまで、ご依頼の受託サービスが開始することができません。そのため、正しくマテリアルを準備、発送し、プロジェクトが遅延しないよう心がけてください。
Q&A
レンチウイルス | MMLV | アデノウイルス | AAV | |
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組織指向性 | 広範 | 広範 | 数細胞種には不適 | ウイルスセロタイプに依る |
非分裂細胞への感染 | 感染する | 感染しない | 感染する | 感染する |
安定発現または一過性発現 | ゲノムへの挿入による安定発現 | ゲノムへの挿入による安定発現 | 一過的、エピソーマル | 一過的、エピソーマル |
得られる最高タイター | 高い | 中程度 | 非常に高い | 高井 |
プロモーターのカスタマイズ | 可 | 可 | 可 | 可 |
主な使用系 | 培養細胞、 in vivo | 培養細胞、 in vivo | In vivo | In vivo |
In vivoでの抗原性 | 低い | 低い | 高い | 非常に低い |
標準的なウイルスタイター測定法は、ウイルス粒子からウイルスゲノムを直接抽出し、ITR領域を増幅するqPCRによって、ウイルスゲノムの物理的タイターを正確に定量化しています。オプションとして、他のタイター測定方法(ddPCR、TCID50など)もご提供しています。お見積りの際にお問合せください。
VectorBuilderで受託構築したプラスミドベクターからウイルスパッケージングを引き続き受注し、かつパッケージングされる5’ ITR から3’ ITRの領域の長さが4.7 kb 以下の場合、タイター保証をご提供しています。4.7 kb を超過した場合は、ウイルスパッケージングは可能ですが、ウイルスにパッケージされるDNAフラグメントが均一でななく、機能欠損したウイルスが生成されることが知られています。さらに以下の場合、タイター保証は適用外となっています:
- セロタイプ4、セロタイプ6、セロタイプDJ/8のパッケージングの場合:他のセロタイプに比べて30-50%のタイターの保証となります。追加作製が必要な場合はお問合せください。
- ベクターに搭載されたORFがパッケージング過程に負の営業を及ぼす場合:例えば、細胞毒性を持つproapoptotic遺伝子群、細胞凝集を誘引する膜タンパク質シークエンス、パッケージング細胞またはウイルスの生合成に負の影響を生じる遺伝子、反復シークエンスや高GCリッチシークエンスなど、ベクタークローニングの際にリアレンジメントや二次構造を生じる可能性の高いシークエンスを含むベクターなどです。
- ユーザーご提供のトランスファープラスミド(cis-plasmid)を使用したウイルスパッケージングのご依頼の場合:高タイターのウイルスパッケージングには不確定要素が多いため、タイター保証には限界があります。
- ユーザーご提供のpRep-Capプラスミドや、pHelperプラスミドを使用したウイルスパッケージングのご依頼の場合:弊社のウイルスパッケージングプロトコールは、弊社のベクター構築用のコンポーネントやベクターバックボーンに対して最適化を行っているため、ユーザー提供のウイルスベクターからの高タイターパッケージングには不確定要素が多いため、保証には限界があります。あらかじめタイターをご指定いただいても保障の適用外となることもあります。
推定作業日数とは、ご注文いただいた受託サービスが弊社で受注され、作製終了し、品質検査に合格し、出荷準備に入るまでの期間を指しています。推定作業日数には、当社製造拠点から出荷ーユーザー納品までの日数は含まれていません。また、ユーザーご提供のプラスミドDNAの受け取り、QCチェックに合格するまでの日数は含まれていません。