Vector Systems
In Vitro 転写ベクター(for mRNA)
概要
当社のin vitro転写ベクターはシンプルかつ効率的にRNAを生成可能で、様々な研究目的に利用できます。In vitro転写ベクターによるmRNA生成システムはin vitro翻訳、生化学研究、細胞または胚へのインジェクション後のタンパク質発現、その他のmRNAが必要な実験に理想的です。
当システムはバクテリオファージT7のRNAポリメラーゼ(T7RNAP)とヌクレオチド三リン酸を適切な反応条件で使用して、目的配列の上流に配置されたT7プロモーターによって高率的でmRNAを生成します。論文等で確立されているin vitro転写プロトコルを参考にして使用することをお勧めします。
T7 RNAPは効率的な転写開始のために必要となる塩基配列があり、既にベクター内に組み込まれています。T7プロモーターの3`末端の“GG”が目的配列の転写に伴ってmRNAの5`末端に付与されます。
当社のmRNA生成用in vitro転写ベクターはrun-off転写方式で設計されています。つまり、T7 RNAPはプラスミド内の特定の場所で転写を停止することなく、DNAテンプレートの最後まで転写を続けます。そのため、環状プラスミドを使う場合は適切に転写産物を生成するためにin vitro転写を実行する前に制限酵素(SapI, BsiWI, AscI)で切断、線状化する必要があります。これらの制限酵素のどれも当社のプラスミドのポリアデニレーションシグナル下流を一度だけ切断します。プラスミドの線状化に使う予定の制限酵素の認識配列が目的配列に含まれていないことを確認してください、さもないと配列内で切断されて不安定化した短いmRNAが生成されてしまいます。制限酵素反応液からの混入物がT7 RNAP転写反応を阻害することがあるのでDNAカラムもしくはフェノール/クロロホルムによる抽出をおこなうことをお勧めします。T7プロモーター配列を持つ断片だけが転写のテンプレートになるので、通常はプロモーターと目的配列を含んだDNA断片を抽出する必要はありません。mRNA 5`末端の7-メチルグアノシンのキャップはin vivoでのmRNAの安定性、転写効率、核輸送、スプライシングに必須です。同様に、ほとんどのin vitro mRNA転写を利用する実験でもRNAがキャップされていることが推奨されています。転写産物のキャップはキャップアナログを使用して転写と同時に行われるか、キャップ酵素を使って転写後に行われます。どちらの方法もインジェクション、in vitro翻訳、その他の実験に使用可能なキャップされたRNAを作製できます。
当ベクターシステムのより詳細な情報については下記の論文を参照してください。
References | Topic |
---|---|
Nucleic Acids Res. 7:1931 (1979) | Cloning and characterization of the T7 promoter |
Methods Mol Biol. 703:29 (2011) | Protocols for the synthesis of RNA by in vitro transcription |
J Vis Exp. 61:3702 (2012) | ping, and transfection of mRNA |
Protein Expr Purif. 9:142 (1997) | Protocol for expression and purification of T7 RNAP for in vitro transcription |
特長
当社のmRNA用in vitro転写ベクターはT7 RNAPによって高効率なin vitro転写ができるように設計されています。当ベクターは高コピー数プラスミドであり、効果的な制限酵素分解、豊富なmRNA生成ができるよう最適化されています。
メリット
高い効率: T7 RNAPは信頼性の高い、高効率な酵素です。T7 RNAPによるin vitro翻訳は大量のmRNAを生成可能です。
シンプルさ:形質転換と細胞培養が必要な細胞内mRNA発現よりもT7 RNAPとプラスミドを使ったin vitro転写は簡便です。
デメリット
転写方向が限定的:当ベクターシステムはin vitro転写用にプロモーターをひとつだけ持ちます。T7プロモーターに対する目的配列の方向によって転写されるRNA配列が決まります。もしセンス・アンチセンスRNAの両方が必要ならば、2種類のベクターを作製する必要があります。
Run-off転写:当ベクターシステムを使用して効率の良いin vitro転写をおこなうためには、前処理として制限酵素によるプラスミドの線状化が必要です。
基本コンポーネント
T7 promoter: T7バクテリオファージ由来のRNAポリメラーゼ用プロモーター。下流の遺伝子の高レベル転写が可能。
Transcribed sequence: 生成したいRNA配列を持つDNAをここに配置する。
poly(A): 30bpのポリA配列。mRNAを安定化する。
SapI, BsiWI, AscI: In vitro翻訳反応の前処理としてプラスミドを線状化するときに利用する制限酵素サイト
pUC ori: pUC複製起点。E.coli細胞内でプラスミドを高コピー数で維持する。
Ampicillin: アンピシリン耐性遺伝子。 E.coliへのアンピシリン耐性によるプラスミドの維持を可能にする。