コドン最適化

コドン最適化は、遺伝子を異種(異なる宿主生物)で発現させる場合、遺伝子のクローニング時に問題が発生した場合、または遺伝子の発現レベルを最適化する場合に有用なツールです。VectorBuilderのコドン最適化ツールは、デザインスタジオに組み込まれていますが、ここから独立して使用することもできます。

ほとんどのアミノ酸は複数のコドンから翻訳されますが、コドンバイアス(偏り)は特定のコドンが他のコドンより優先することを反映し、種によって異なります。このため、ある遺伝子を異なる宿主種に配置した場合、翻訳量が減少する可能性があります。

本ツールは、宿主生物のコドンの偏りを利用して、同じアミノ酸配列をより高い効率で生成するコドン適応指数(CAI)を最適化することができます。

コドン最適化は、さらに目的の遺伝子のクローニング効率を向上させるために使用することができます。本ツールを用いることで、GC含量や繰り返し配列の最適化、mRNAの安定性の向上、制限酵素認識部位を回避するなど、転写や翻訳の効率を向上させることができます。

以下にコドン最適化ツールを使用した例を示します:

1. 目的生物種の最適コドンに配列を最適化する表示する

図1は、Trichoplusia niの天然型piggyBacトランスポゼース配列を、VectorBuilderコドン最適化ツールを利用してヒト細胞で発現するように最適化した例を示す。最適化前の配列ではCAIは0.69だが、最適化後の配列ではCAIが0.93になった。CAIは優先コドンの使用頻度を定量化し、CAI値を0〜1で求めている。発現目的生物種のCAI値が高いほど、目的発現系で最適に発現するコドンが選択されていることを示している。

図1. VectorBuilderのコドン最適化ツールを使用して目的生物種にコドンを最適化した 。

2. GC含有量が高い配列を最適化する表示する

図2は、全体のGC含量が69.3%のマウスHoxa4遺伝子をツールを使用して最適化すると、GC含量が59.5%に低下したことを示している。ベクタークローニングに遺伝子合成が必要な場合、遺伝子合成の成功を高めるために、約60%の最適なGC含量が推奨される。

図2. VectorBuilderのコドン最適化ツールを使用してGC含量を低下させた。

3. 反復領域のある配列を最適化する表示する

図3は、ヒト免疫グロブリン重鎖配列を最適化ツールを使用したコドン最適化の前後で、比較したドットプロットを示している。最適化前のドットプロットは、複数の対角線で示される反復性の高い領域が全配列に存在することを示しているが、最適化後のドットプロットでは、配列の最適化により、反復性が大幅に減少した。

図3. VectorBuilderのコドン最適化ツールを使用して反復領域を減らした。

コドン最適化ツール ミニ講座 ヒント

タンパク質合成

タンパク質合成のためには、まず細胞によるmRNAの翻訳が必要になる。mRNAは転写反応のあと細胞核を抜け出して、アミノ酸を運ぶ各tRNA分子がマッチする3塩基のグループがmRNAに結合します(図1A)。この3塩基グループがコドンと呼ばれ、それぞれのコドンが固有のアミノ酸に紐づけされている。アミノ酸は20種類あるが、コドン数はそれ以上になるので図のように複数コドンが同じアミノ酸をコードしている(図1B)。

Figure1A Figure1B

図1. A)転写反応と翻訳反応によるタンパク質の合成過程。B)それぞれのコドンはアミノ酸もしくは開始/停止コドンに対応している。

コドンバイアス

特定のアミノ酸に対応するコドンは複数あるが、どのコドンを使用するのかについてはランダムに決められているわけではない。生物種によって使用するコドンのバイアスがあり、特定のコドンの使用頻度が高くなっている。例えば、アラニン(Ala)コドンはGCU、GCC、GCA、GCGであり、ヒトではアラニンのおよそ40%にGCGが使用されている。生物種ごとのコドン頻度の違いによって、RNAプロセシングやタンパク質のフォールディングや機能に影響を及ぼす。特に遺伝子を別種で発現させるケースでは予期しない結果の原因となる。

コドン適応度指数(CAI)は任意DNA配列のコドンが特定生物のコドンバイアスにどの程度適応しているかを示す指数(0-1.0)となる。CAIが1の場合、すべてのコドンが生物において最も頻度の高いコドンで構成されている。弊社のコドン最適化ツールは最適なCAIと分子生物学実験に影響を与えるその他要因とのバランスを考慮に入れた結果を出力します。

クローニング効率の向上

コドン最適化は配列中のヌクレオチド分布を操作することでクローニング効率の向上にも役立つ。GC含有率はベクターデザインとトラブルシューティングにおいて重要な変数である。GC含有率が高すぎたり低すぎたりすると、DNA配列の安定性はネガティブな影響を受ける。弊社のGC含有率計算ツール は全長配列、もしくは一部配列区分に対してGC配列解析をおこなう。弊社のコドン最適化ツールはGC含有率計算結果を使用して、必要に応じてGC含有率を増やす/減らすなどの調節をおこなう。

高度な反復配列もユニークなプライマー結合部位や制限酵素サイトがないことから、クローニングの難易度の上昇原因となる。コドン最適化ツールはこれらの要因も考慮に入れ、実験に必要なタンパク質の発現に適した配列を提案する。

  • GenbankとFASTA形式に対応。
  • RNA/DNA配列もしくはアミノ酸配列を入力する。
  • RNA/DNA配列は開始コドンで始まり、3倍数の塩基数である必要がある。

これらの情報の使用に起因する損害について、弊社は一切の責任を負いかねますのであらかじめご了承ください。

マイベクターをデザインする