厳密な遺伝子発現切り替え:LoxP-Stop-LoxPを含む他の条件的遺伝子発現システムでは特定の条件下で低レベルの発現漏れが起こります。しかし当システムではCreによる組み換え反応前に目的遺伝子は逆向きに配置されるので、発現は完全に抑制されます。
安定した遺伝子活性化: Cre組み換え反応は目的遺伝子をプロモーターに対してセンス方向に反転します。遺伝子の反転後に続いて起こる組み換え反応によって、LoxPバリアントペアのそれぞれ片側が取り除かれます。結果、目的遺伝子の両端にはLoxPとLox2272がひとつずつ配置される形になり、Cre存在条件でもこれ以上の組み換え反応が起こることはありません。組み換え反応終了後は、任意のプロモーターを使用して目的遺伝子を発現します。
宿主ゲノムの損傷リスクが低い:宿主細胞に感染したアデノウイルスベクターは細胞核内でエピソームDNAとして維持されます。ゲノムへの挿入が起こらないために、ゲノムの損傷よる癌化の可能性が低く、ヒト生体に使用する用途に適しています。
非常に高いウイルスタイター: アデノウイルスベクターをパッケージング細胞に導入して作製したウイルスをパッケージング細胞に再感染させることでウイルスを増幅して非常に高いタイターを得られます。このような増幅はレンチウイルス、MMLVレトロウイルス、AAVなどではできません。当社のアデノウイルス作製サービスを利用していただければ、1011 PFU/ml(plaque-forming unit per ml)以上のタイターを得ることができます。
幅広い親和性:ヒト、マウス、ラットなどの哺乳類動物由来の細胞に遺伝子を導入できます。ただし、いくつかの細胞タイプへの遺伝子導入は困難であることが知られています。
組み込み可能なDNAサイズが大きい:アデノウイルスゲノムのサイズ上限は5' ITRから3' ITRまでのあいだで38.7kbです。アデノウイルスの遺伝子発現やFLEX(Cre-On)スイッチなどに必要なバックボーン部分を除くとおよそ7.4kbのDNA配列を当社のベクターに組み込むことができます。レンチウイルスベクターの組み込み可能サイズである6.3kbと比べて大きく、ほとんどの用途に十分なサイズとなります。
In vitroとin vivoで有効:レンチウイルスベクターは培養細胞と生体の両方に対して効果的です。特にCreによる条件的遺伝子発現システムが導入されたトランスジェニック動物の作製に適しています。
安全性:当ベクターからはウイルス作製に必須の遺伝子が取り除かれているため(それらの遺伝子はパッケージング細胞のゲノムに組み込まれています)、当ベクターから作られるウイルスは複製不能であり安全です。