Vector Systems
標準プラスミドshRNAノックダウンベクター
概要
当社の標準プラスミドshRNAノックダウンベクターシステムは広範な細胞タイプでシンプルかつ効率的に標的遺伝子の発現を一過的にノックダウンすることができます。従来のプラスミドベクターをもちいた形質転換法でshRNA発現カセットを哺乳類細胞に導入、標的遺伝子をノックダウンします。shRNAはヒトU6プロモーターから発現され、標的遺伝子mRNAを分解します。
近年はレンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、AAVベクターやPiggyBac等の優れた遺伝子導入法が開発されていますが、従来通りの方法は技術的に容易であることと多くの細胞タイプにおいて十分な効率が得られるために、現在でも多くのラボで利用されています。プラスミドベクターによる遺伝子導入は一過性であり非常に少数の細胞(大抵は1%以下)でのみプラスミドのゲノムへの挿入が起こります。
当ベクターシステムに関する詳細な情報ついては下記の論文を参照してください
References | Topic |
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Methods Mol Biol. 629:141 (2010) | Review on design and delivery of shRNAs |
Cancer Gene Ther. 16:807 (2009) | Comparison of siRNA and shRNA off target effects |
Mol Cell Biol. 24:2614 (2004) | Regular plasmid-mediated expression of shRNAs |
特長
当社のベクターはE.coliでの高コピー数複製と高い遺伝子導入効率を達成しており、また、マーカー遺伝子の発現による薬剤選択もしくは可視化によってベクターが導入された細胞を選別することができます。
メリット
簡便さ:パッケージングなどが必要なウイルスによる遺伝子導入と比べて、従来のプラスミドベクターによる遺伝子導入法は簡便です。
高レベル発現:従来のプラスミドベクターによる遺伝子導入法はしばしば非常に高いコピー数(数千コピー)を細胞に導入できます。これらの細胞は非常に高い遺伝子の発現量を持ちます。
選択マーカーを利用可能:当社の標準プラスミドshRNAノックダウンベクターは薬剤耐性マーカーや可視化用蛍光マーカー遺伝子を追加できます。これによってマーカー遺伝子を使用しないでshRNAノックダウンをおこなうよりも、ベクターが導入されている細胞を選別・可視化できるようになり利便性が向上します。
オフターゲット効果の抑制:shRNAは合成siRNAと比べてオフターゲット活性が低いことが知られています。shRNAと同程度のノックダウン効果を得るためには非常に高濃度のsiRNAが必要になるためにオフターゲット効果の可能性が上昇することが理由です。くわえて、shRNAは核内で転写されるのに対してsiRNAは細胞質にとどまるために分解されやすくなり、意図しないオフターゲット効果の原因となります。
デメリット
ベクターDNAがゲノムへ挿入されない:従来のプラスミドによる遺伝子導入法はプラスミドベクターのほとんどがエピソームDNAとして維持されるために、ベクターは細胞内で短期間のみ維持されます。その結果shRNAによる標的遺伝子のノックダウンは一過的なものになります。しかし、非常に低い頻度ですが(細胞タイプによって102-106細胞あたり1回)、ベクターの宿主ゲノムへ挿入が起こります。薬剤耐性や蛍光マーカーがプラスミドベクターに組み込まれているならば、薬剤選択やセルソーターによって挿入が起こった細胞を選別できます。
細胞タイプが限定される:標準プラスミドshRNAノックダウンベクターの細胞への導入効率は細胞タイプに依存します。非増殖細胞は一般的に増殖細胞よりも効率が悪く、プライマリ細胞は不死化細胞株よりも効率が悪くなります。いくつかの細胞タイプ、神経細胞や膵臓β細胞への遺伝子導入は非常に困難になります。プラスミドによる遺伝子導入はin vitro用途に限定され、in vivo用途にはほとんど使用されません。
導入コピー数にばらつきが大きい:細胞あたりに導入されるベクターの平均コピー数は非常に高くなりますが、ばらつきが大きくなります(ある細胞は非常に高コピー数だが、別の細胞は数コピーしかない、等)。一方でウイルスによる遺伝子導入法はこのようなばらつきは小さくなる傾向があります。
基本コンポーネント
U6 promoter: ヒトU6 snRNAのプロモーター。RNAポリメラーゼIIIによってshRNAを高レベルで発現する。
Sense, Antisense: 標的配列から設計され、shRNAのヘアピン構造のステム部分を形成する。
Loop: shRNAのヘアピン構造のループ部分を形成するために最適化された配列。
Terminator: shRNAの転写を停止する。
hPGK promoter: ヒトphosphoglycerate kinase 1 遺伝子プロモーター。下流のマーカー遺伝子を遍在的に発現する。
Kozak: Kozak配列。真核生物での翻訳開始を促進すると考えられているためORFの開始コドンの前に配置される。
Marker: 薬剤選択用遺伝子(ネオマイシン耐性など)や視覚化用遺伝子(EGFPなど)。ベクターが導入された細胞の薬剤選択もしくは可視化を可能にする。
SV40 late pA: SV40(Simian virus 40)のlateポリアデニレーションシグナル。上流マーカー遺伝子の転写を停止する。
pUC ori: pUC複製起点。E.coliでプラスミドを高コピーで維持する。
Ampicillin: アンピシリン耐性遺伝子。 E.coliへのアンピシリン耐性によるプラスミドの維持を可能にする。