Vector Systems
標準遺伝子発現ベクター
発現ベクターの概要
哺乳細胞へのプラスミド導入で使用されるトランスフェクション法は、バイオメディカル研究においてよく使用される一般的な手法の1つです。近年では、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、AAVベクター、piggyBacなど、より洗練された導入方法が開発されていますが、トランスフェクション法は、技術的に容易で、かつ多様な細胞へ導入できることから、現在でも多くの研究室で利用されています。一般的なプラスミドベクターの導入は、トランスフェクション法ではそのほとんどが一過性であり、細胞ゲノムに組み込まれる割合は1%以下と大変低くなっています。
ベクターシステムの詳細については、下記の文献をご参照ください。
参考論文 | トピックス |
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Mol Biotechnol. 16:151 (2000) | 哺乳細胞における遺伝子発現ベクターのデザイン概要 |
EMBO J. 12:2539 (1993) | 転写終結のデザイン概要 |
発現ベクターの特長
ベクタービルダーのベクターは、大腸菌内で高いコピー数を保持し、また高いトランスフェクション効率を発揮するようにデザインされています。ベクター導入細胞は、ユーザーが選択したマーカー遺伝子発現に基づいて選択および/または視覚化することができます。
発現ベクターのメリット
技術的な容易さ: トランスフェクション法によるプラスミドベクターの導入は、ウイルス生体のパッケージング作業を必要とするウイルスベクターよりも、はるかに容易な技術で行うことができます。
大きなインサート用スペース: 約3kbのプラスミドバックボーンには、インサート用に大きなスペースが用意されており、最大30kbまでのDNAを挿入することができます。
高レベル発現: 細胞に導入されたベクターは、細胞内で非常に高いコピー数(細胞あたり数千コピー)を保持できるため、目的遺伝子の高レベルな発現が期待できます。
発現ベクターのデメリット
不安定な導入: トランスフェクション法で導入されたプラスミドベクターのほとんどは、ゲノムDNAに組み込まれることなく、細胞内でエピソーマルに存在しており、その導入は一過性です。しかしながら、非常に低い頻度 (102 から 106 細胞あたり1か所)でゲノムDNAに組み込まれ、恒久的に導入される場合もあります。その場合、薬剤耐性や蛍光マーカーがプラスミドに挿入されていれば、プラスミドがゲノムDNAに組み込まれた細胞を薬剤耐性やセルソーティングによって選別することができます。
細胞タイプの制限: トランスフェクション効率は細胞タイプによって大きく異なります。非分裂細胞は分裂細胞よりも、また初代培養細胞はライン化された細胞よりも導入が困難です。さらに、神経細胞や膵臓β細胞なども、トランスフェクション法での導入は困難であることが知られています。また、プラスミドのトランスフェクションはin vitro実験に限定され、in vivo実験での応用は困難です。
コピー数のバラツキ: トランスフェクション法によるプラスミド導入では、細胞間で導入効率のバラツキが生じ、高コピー数の細胞、低コピー数の細胞、あるいはまったく導入されなかった細胞の混在になってしまいます。これは、比較的均一に導入できるウイルスベクターとは異なる特徴です。
ベクタービルダーの発現ベクター基本コンポーネント
プロモーター: 目的遺伝子を発現させるためのプロモーターをここに設定して下さい。
Kozak: 真核生物における翻訳開始に重要なKozak配列をORF内開始コドンの前に配置します。
ORF: Open Reading Frame. 目的遺伝子のタンパク質コード領域をここに設定して下さい。
SV40 late pA: ORFの転写終結に重要なシアミンウイルス40後期ポリA付加シグナルをORF下流に配置します。
CMV プロモーター: ヒトサイトメガロウイルスプロモーターは、下流のマーカー遺伝子をユビキタスに発現させます。
Marker: 薬剤選択遺伝子(ネオマイシン耐性など)、蛍光マーカー遺伝子(EGFPなど)、あるいはデュアルレポーター遺伝子(EGFP/Neoなど)の挿入によって、導入細胞の選択、あるいは視覚化が可能になります。
BGH pA: Bovine growth hormone polyadenylation. 上流ORFの転写終結に重要です。
pUC ori: pUCの複製起点であるpUC oriが挿入されたプラスミドは、大腸菌において高コピー数で保持されます。
アンピシリン: アンピシリン耐性遺伝子は、アンピシリンによってプラスミド導入大腸菌を選択します。
Representative vector design
VB ID | Vector name | Descriptions |
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VB010000-9486rey | pRP[Exp]-CMV>EGFP/Puro | A regular plasmid encoding an EGFP: puromycin resistance fusion protein driven by a CMV promoter. |
VB900120-0467nuf | pRP[Exp]-CAG>DD-Cre | A regular plasmid encoding a destabilized Cre recombinase protein, which functions in the presence of trimethoprim (TMP), under the control of a CAG promoter. |