Vector Systems
標準プラスミドベクター(in vivo エンハンサーテスト用)
概要
当ベクターシステムはマウスモデルで哺乳動物のエンハンサーを研究するために開発されました。エンハンサーと推測される配列をベクターにクローニングし、トランスジェニックマウスの作製に使用します。トランスジェニックマウスの胚や生体におけるlacZレポーターの発現パターンをエンハンサー活性の出力として検出します。
当ベクターシステムはエンハンサーの特定、エンハンサーの組織特異性の決定、エンハンサー亜種間の比較や系統追跡など多様な実験に有用です。
当ベクターシステムに関する詳細な情報ついては下記の論文を参照してください
References | Topic |
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Nature. 444:499-502 (2006) | Use of the vector systemtocarry out genome-wide testing of putative enhancers in the mouse |
Development. 105:707-714 (1989) | Cloning of the Hsp68 minimal promoter |
特長
当ベクターは標準的なプラスミドベクターを基に開発されています。エンハンサーと推測される配列をlacZレポーター遺伝子の発現を制御するHsp68最小プロモーター(Hsp68_mini)の上流に配置して検定に使用します。活性を持つエンハンサーは最小プロモーターを活性化してLacZを発現させます。エンハンサー活性がないとHsp68最小プロモーターはほとんど活性をもたないのでLacZはほとんど発現しません。LacZとX-galによるwhole mount胚や組織切片のin situ色素染色はエンハンサー活性の非常に高感度な検出を可能にします。
メリット
トランスジェニック動物の作製が容易:従来の前核注入によって効率良くトランスジェニックマウス胚や生体を作製できます。
簡便で高感度な検出:LacZをレポーターとしたX-gal染色方法は低発現量でも十分に検出可能な青色色素を作り出すのでエンハンサー活性の高感度な検出が可能です。
デメリット
宿主ゲノムへのランダムな挿入:トランスジェニックマウスを作製する際、ベクターの前核注入によって複数ベクターコピーが宿主ゲノムへ挿入されることがあります。挿入サイト周辺のゲノム配列による位置効果、挿入されたベクターのコピー数のばらつき、挿入されるベクターの部分的な分解によってレポーターと遺伝子の発現レベルと組織特異性が変化することがあります。この問題を解決するために、ひとつのベクターに対して複数のトランスジェニックマウス株を用意します。それらのあいだで共通の発現パターンが観察されれば、エンハンサーが要因となった本来の発現パターンであるといえます。
基本コンポーネント
Enhancer: エンハンサー配列はここに配置される。
Hsp68 minimal promoter: マウスHsp68 (heat shock protein 68kDa)プロモーター由来の最小プロモーター。最小プロモーターは下流のレポーター遺伝子の発現にエンハンサーを必要とする。エンハンサーがないとレポーター遺伝子をほとんど発現しない。
LacZ: β‐ガラクトシダーゼ遺伝子。LacZは無色で可溶性のX-galを青色で不溶性の化合物に変換することでLacZを発現している細胞を染色する。
SV40 late pA: SV40(Simian virus 40)のlateポリアデニレーションシグナル。上流ORFの転写停止を助ける。
Ampicillin: アンピシリン耐性遺伝子。 E.coliへのアンピシリン耐性によるプラスミドの維持を可能にする。
pUC ori: pUC複製起点。E.coliでプラスミドを高コピーで維持する。