ピキア酵母(Pichia pastoris)発現系ベクター

概要

当社のピキア酵母用組み換えタンパク質発現ベクターシステムは強力かつ効率的なシステムです。ピキア酵母はメチルトロフィック(メタノールを炭素源として利用可能)酵母で研究や産業分野でタンパク質生産のために幅広く利用されています。

当ベクターシステムでは、実験に恒常的発現、もしくは発現誘導が必要かに依存して目的遺伝子をGAP(glyceraldehyde-3-phosphate dehydrogenase)プロモーターもしくはAOX1(alcohol oxidase 1)プロモーター下流にクローニングします。GAPプロモーターは強力な恒常的プロモーターで、AOX1プロモーターはメタノールによって精密かつ強力に発現を制御できます。どちらのプロモーターも高レベルの発現が可能で、細胞の水溶性タンパク質量の30%以上を占めるほどの発現が得られます。GAPプロモーターは活性化状態のAOX1プロモーターよりもやや強い活性を持ちます。タイムコース実験をして組み換えタンパク質の発現条件を最適化し、どちらのプロモーターが適しているかを決定することをお勧めします。

出芽酵母と違い、ピキア酵母はメタノールを炭素源として代謝することができ(メチルトロフィック)、10から100倍以上の組み換えタンパク質の発現レベルを得ることができます。さらに、出芽酵母で利用される技術の多くはピキア酵母でも使用可能であり、両種は共通の遺伝子アノテーションや遺伝子名称法を採用しているので、研究がしやすい利点を持ちます。

 

当ベクターシステムに関する詳細な情報ついては下記の論文を参照ください

References Topic
Gene. 186:37 (1997) Description of GAP promoter
Mol Cell Biol. 5:1111 (1985)
Yeast. 5:167 (1989)
Description of AOX1 promoter

特長

当ベクターシステムはピキア酵母における組み換えタンパク質の恒常的発現もしくは誘導型発現による生産を可能にします。目的遺伝子は恒常的なGAPプロモーターもしくは誘導型のAOX1プロモーターの下流にクローニングされます。

メリット

高い発現量: GAP、AOX1プロモーターどちらも目的遺伝子を非常に高いレベルで発現可能。

厳密な発現制御:AOX1プロモーターを利用した場合、目的遺伝子はメタノール非存在下では強力に発現抑制され、メタノール存在下では高レベルに発現される。

デメリット

望ましくない発現“漏れ”の可能性: GAPプロモーターは恒常的に活性があるので目的遺伝子の発現は制御を受けません。通常、AOX1プロモーターはメタノール非存在下で厳密に抑制されていますが、いくつかのケースでは発現の“漏れ”が問題になることがあります。

基本コンポーネント

Promoter: 目的遺伝子を高レベルに発現する。

Kozak: Kozak配列。真核生物での翻訳開始を促進すると考えられているためORFの開始コドンの前に配置される。

ORF: 目的遺伝子の配列。

AOX1 TT: ピキア酵母のアルコールオキシダーゼ1遺伝子の転写停止配列。mRNAの転写停止及びポリA付加を促進する。

Zeocin: ゼオシン耐性遺伝子。大腸菌と酵母へのゼオシン耐性によるプラスミドの維持を可能にする。

pUC ori: pUC複製起点。E.coliでプラスミドを高コピー数で維持する。

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