Vector Systems
PiggyBacプロモーターテスト用ベクター
(In Vivo プロモーターテスト用)
概要
当ベクターシステムはマウスモデルで哺乳動物のプロモーターを研究するために開発されました。プロモーターと推測される配列をベクター内のマウスhsp68最小プロモーターの上流にクローニングしたのち、トランスジェニックマウスの作製に使用します。トランスジェニックマウスの胚や生体におけるLacZレポーターの発現をプロモーター活性の出力として検出します。当ベクターシステムはプロモーターの特定、プロモーターの組織特異性の決定、プロモーター亜種間の比較や系統追跡等に利用できます。
当社のpiggyBacトランスポゾンベクターシステムは高効率で外来性DNAを宿主哺乳類細胞のゲノムに挿入できます。当システムはウイルスを利用せず、プラスミドベクターを利用して目的の遺伝子を宿主ゲノムへ恒久的に挿入することができる簡便なシステムです。
piggyBacシステムはE.coliプラスミドとして設計された2つのベクターから構成されます。ひとつめはヘルパープラスミドとよばれ、トランスポゼースを持ちます。もうひとつはトランスポゾンプラスミドと呼ばれ、2つのITR(inverted terminal repeats)が転移されるDNA配列を挟み込むかたちで配置されています。プロモーター配列はトランスポゾンプラスミドの2つのITRのあいだにクローニングされます。ヘルパープラスミドとトランスポゾンプラスミドが標的細胞に同時に導入されると、ヘルパープラスミドから発現したトランスポゼースはトランスポゾンプラスミド上の2つのITRを認識してITRとそのあいだの領域を宿主ゲノムへ挿入します。piggyBacトランスポゾンはゲノムのTTAA配列に挿入されます。挿入の過程でTTAA配列は複製されて挿入場所の両端に配置されます。
piggyBacはクラスIIトランスポゾンであり、カット&ペースト様式(転移後に自身のコピーを残さない)で転移します。クラスIトランスポゾンは転移のあとに自身のコピーを残す、コピー&ペースト様式をとります。ヘルパープラスミドは一過的に細胞内に導入されるだけなので、時間経過とともに失われます。ヘルパープラスミドの宿主細胞からの消失によってゲノムへ挿入されたトランスポゾンは恒久的に固定化されます。
当ベクターシステムに関する詳細な情報ついては下記の論文を参照してください
References | Topic |
---|---|
Comput Chem. 23:191 (1999) | Review on eukaryotic promoter prediction |
Mol Cell Biochem. 354:301 (2011) | Review of the piggyBac systems |
Cell. 122:473 (2005) | Efficient transposition of the piggyBac (PB) transposon in mammalian cells and mice |
特長
当ベクターシステムはpiggyBacトランスポゾンを基に開発されています。プロモーターと推測される配列はlacZレポーター遺伝子の上流にクローニングされ、検定されます。活性をもつプロモーター配列は LacZレポーターを発現します。プロモーター活性をもたない場合、LacZはほとんど発現することはありません。LacZとX-galによるwhole mount胚や組織切片のin situ色素染色はプロモーター活性の非常に高感度な検出を可能にします。
メリット
簡便で高感度な検出:LacZをレポーターとしたX-gal染色方法は低発現量でも十分に検出可能な青色色素を作り出すのでプロモーター活性の高感度な検出が可能です。
トランスジェニック動物の作製が容易:従来の前核注入によって効率良いトランスジェニックマウス胚や生体を作成できます。
簡便さ: ウイルス作製などが必要なウイルスベクターよりもプラスミドベクターによる遺伝子導入ははるかに簡便です。
恒久的なベクターDNAの挿入: 従来の形質転換法では宿主細胞へのDNAの導入は時間経過によるDNAの減少のために一過的なものでした。この問題は増殖の速い細胞では特に顕著になります。一方で、piggyBacトランスポゾンプラスミドとヘルパープラスミドを利用することによって恒久的に任意のDNA配列をトランスポゾンと共に宿主ゲノムへ挿入することができるため、長期間にわたる観察が必要な実験が可能になります。
大きなサイズDNAが許容可能: 当社のベクターは全体で~30kbのDNA配列を扱うことができます。これによってサイズの大きなプロモーターの検定が可能です。
デメリット
ヘルパープラスミドが必要: 標準的なプロモーターテスト用プラスミドベクターとは違い、piggyBacシステムはヘルパープラスミドとトランスポゾンプラスミドの同時使用が必要です。プロモーター配列の宿主ゲノムへの挿入のためには両プラスミドが同時に細胞内に存在しなくてはいけません。
基本コンポーネント
5' ITR: 5' inverted terminal repeat。piggyBacトランスポゼースは2つのITRを認識してITRとそのあいだのDNA配列を宿主ゲノムへ挿入する。
Promoter: プロモーターはここに配置される。
LacZ: β‐ガラクトシダーゼ遺伝子。LacZは無色で可溶性のX-galを青色で不溶性の化合物に変換することでLacZを発現している細胞を染色する。
SV40 late pA: SV40(Simian virus 40)のlateポリアデニレーションシグナル。上流ORFの転写停止を助ける。
3' ITR: 3' inverted terminal repeat。
Ampicillin: アンピシリン耐性遺伝子。 E.coliへのアンピシリン耐性によるプラスミドの維持を可能にする。
pUC ori: pUC複製起点。E.coliでプラスミドを高コピーで維持する。