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植物CRISPR(dual gRNA)アグロバクテリウム バイナリーベクター

概要

アグロバクテリウムを利用した遺伝子導入法は効率的にトランスジェニックプラントを作製できます。当システムは多くの植物種のゲノムに外来性DNAを挿入できるアグロバクテリウム(Agrobacterium tumefaciens)とバイナリーベクターを利用したシステムです。CRISPR/Cas9を植物種に使用するために、ベクタービルダーはgRNAとCas9を共発現するバイナリーベクターを開発し、遺伝性の遺伝子変異の効率的な導入を実現しました。

アグロバクテリウムバイナリーベクターはT-DNA(transfer DNA)と病原性領域(vir)から構成される腫瘍誘導(Ti)プラスミドを基に開発されました。転移される遺伝子は右・左境界反復配列と呼ばれる25bpの反復配列のT-DNA領域に配置されます。T-DNA領域に加えて、TiプラスミドはT-DNA の転移と植物ゲノムへの挿入に関わるVir領域を持ちます。当社のバイナリーベクターシステムでは、目的配列の宿主ゲノムへの挿入に必要なT-DNA境界反復配列以外のすべてのがん化に関連した配列をT-DNAから取り除いてあります。バイナリーベクターベクターシステムは2つのプラスミドから構成されます。ひとつめはT-DNAバイナリーベクター(もしくは単純に‘バイナリーベクター’)と呼ばれ、宿主植物へと挿入されるDNA配列の両脇に配置された2つのT-DNA境界反復配列を持ちます。目的遺伝子はバイナリーベクターのT-DNA境界反復配列のあいだにクローニングされます。ふたつめのプラスミドはvirヘルパープラスミドと呼ばれ、T-DNA境界反復配列に挟まれた配列を植物細胞ゲノムに挿入するために必要なコンポーネントを持っています。バイナリーベクターとvirヘルパープラスミドが同じアグロバクテリウム細胞に存在すると、virヘルパープラスミドから発現したタンパク質がバイナリーベクターにはたらきかけてT-DNA境界配列間の配列を植物細胞ゲノムに挿入します。CRISPR-Cas9システムでは、gRNAとCas9タンパク質から構成されるゲノム編集複合体を形成します。gRNAのターゲット配列の隣にPAM(protospacer adjacent motif)があると、gRNAがターゲット配列に結合し、Cas9ヌクレアーゼがDNAの二本鎖切断を行います。その後、宿主細胞のDNA修復に伴って変異が生み出されます。

CRISPR-Cas9システムでは、gRNAとCas9タンパク質から構成されるゲノム編集複合体を形成します。gRNAのターゲット配列の隣にPAM(protospacer adjacent motif)があると、gRNAがターゲット配列に結合し、Cas9ヌクレアーゼがDNAの二本鎖切断を行います。その後、宿主細胞のDNA修復に伴って変異が生み出されます。このベクターシステムにはgRNAが2つ含まれているため、目的遺伝子内の2か所をターゲットにすることができるため、より高い効率を達成できます。

ベクタービルダーは植物細胞において効果的なCRISOR/Cas9遺伝子編集を行うために、gRNA-Cas9共発現バイナリーベクターを開発しました。gRNAの転写開始と停止は、AtU6-26(またはOsU3)プロモーターとAtU6-26ターミネーターを使用します。トウモロコシのコドンに最適化されたCas9(ZmCas9)は、CaMV 35Sプロモーターによって発現し、rbcS-E9ポリアデニレーションシグナルによって停止します。選択用抗生物質耐性マーカーとしてNeo/Kana、Bar、Hygroを組み込むことが出来ます。他のバイナリーベクターと同様にゲノムに挿入されるコンポーネントは右・左T-DNA反復配列の間に配置されます。バックボーンにpBR322/pVS1 oriを持つことでアグロバクテリウムにおけるプラスミドの複製を可能にし、pVS1 StaAシグナルを組み込むことでプラスミドの安定性を高めています。

当ベクターシステムに関する詳細な情報ついては下記の論文を参照ください

文献 トピック
Plant Physiology. 146:325-32 (2008)
Trends in Plant Sci. 5:446-51 (2000)
Review of T-DNA binary vector system
GM Crops Food. 12:647-658 (2021)
BMC Plant Biol. 14:327 (2014)
Cell Res. 23:1229-32 (2013)
Introduction of building binary vectors to deliver CRISPR/Cas9 system in plant genomes

特長

多様な植物種にデュアルgRNAを使用したCRISPR/Cas9ゲノム編集を行うために最適化されています。

メリット

恒久的なベクターDNAの挿入: これまでの遺伝子導入法では宿主細胞へのDNAの導入はエピソーマルDNAの減少のために一過的なものとなっていました。この問題は増殖の速い細胞では特に顕著になります。一方で、アグロバクテリウムベクターを使った植物細胞の形質転換はT-DNA領域を宿主ゲノムへと挿入するため、CRISPRコンポーネントを恒久的に導入することができます。

簡便さ: バイナリーベクターを使ったアグロバクテリウムの遺伝子導入およびバイナリーベクターとアグロバクテリウムを使った植物細胞への遺伝子導入は容易に実行できます。

デメリット

大腸菌での複製ができない: 本ベクターの複製起点はアグロバクテリウムでのみ機能します。

3’ 末端領域の欠損: 植物細胞内で左側(3‘末端)のT-DNA境界反復配列のDNAが分解されることは頻繁に起こります。しかしながら、左側T-DNA境界反復配列にはマーカー遺伝子が配置されており、研究の目的遺伝子は右側T-DNA境界反復配列の近くに配置されるので大きな問題になりません。

ベクターバックボーンの挿入: T-DNA境界反復配列に挟まれた配列以外の、ベクターのバックボーン部分の挿入が起こることがあります。当社のバイナリーベクターシステムは低コピー数アグロバクテリウムベクターを使用しており、バックボーン挿入の発生する頻度がより低くなっています。

基本コンポーネント

Promoter: 目的の遺伝子を発現させるプロモーター。

gRNA: 使用するCas9バリアントに対応したgRNA。

AtU6-26 terminator: シロイヌナズナU6-26遺伝子ターミネーター。RNAポリメラーゼIIIによって転写された低分子RNAの転写を停止する。

2×CaMV 35S: 2xカリフラワーモザイクウイルス35Sプロモーター。植物の強力な恒常的プロモーター。

ZmCas9: トウモロコシのコドン最適化したStreptococcus pyogenes由来のCas9タンパク質で、3×FLAGタグと核内移行シグナルを持つ。二本鎖DNA切断する。

rbcsS-E9 polyA: エンドウの rbcS-E9遺伝子ターミネーター。RNAポリメラーゼllによって転写されたmRNAの転写停止とポリアデニレーションに必要。

CaMV 35S_enhanced:  マーカー遺伝子発現用の強力なキメラプロモーター。

Marker: 遺伝子導入後の植物細胞の選別を可能にする薬剤耐性遺伝子。

CaMV 35S pA: カリフラワーモザイクウイルス35Sポリアデニレーションシグナル。マーカー遺伝子の転写停止とポリA付与を促進する。

LB T-DNA repeat: 左T-DNA境界反復配列。アグロバクテリウム細胞内でTiプラスミドに認識されるとT-DNA境界反復配列のあいだの領域は植物細胞へと導入される。

Kanamycin: カナマイシン耐性遺伝子。 カナマイシンへ耐性の有無によって宿主バクテリア内でのプラスミドの維持が可能になる。

pBR322 ori: pBR322複製起点。E.coliのプラスミド複製に必要。pBR322複製起点をもつプラスミドはRopタンパク質があると低コピー数(細胞あたり15-20コピー)で維持される。Ropタンパク質がない場合は中コピー数(細胞あたり100-300コピー)で維持される。

pVS1 oriV: アグロバクテリウムでのpVS1プラスミドの低コピー数複製起点。

pVS1 RepA: アグロバクテリウムでのpVS1プラスミドの低コピー数複製に必要なタンパク質。

pVS1 StaA: アグロバクテリウムでのpVS1プラスミドの安定性した分配に必要なタンパク質。

RB T-DNA repeat: 右T-DNA境界反復配列。アグロバクテリウム細胞内でTiプラスミドに認識されるとT-DNA境界反復配列のあいだの領域は植物細胞へと導入される。

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