目的遺伝子がクローニングされたpBADベクターを持つ宿主大腸菌はL-アラビノース非含有増殖培地(非誘導条件)で維持してください。発現した遺伝子産物が宿主に対して毒性がある場合にプラスミドが不安定化する可能性を減らすことができます。遺伝子の発現誘導が必要になったらL-アラビノースを培地に添加してください。
当社のpBADベクターは双方向性のaraBADプロモーターをもち、目的遺伝子と発現制御タンパク質AraCを同時に発現します。L-アラビノース非存在下でAraCは2量体化しプロモーター領域でループを形成することで転写を阻害します。L-アラビノース存在下ではAraCの立体構造は変化し、プロモーター領域の別サイトに結合して転写を活性化します。
培地へのグルコース添加は細胞内cAMPレベルを減少させて発現の“漏れ”をさらに抑制します。グルコース非含有培地ではcAMPレベルは高く、cAMP-CRP (catabolite activator protein)複合体がaraBADプロモーターに結合します。この結合はプロモーター活性に必要です。グルコースの添加によるcAMPレベル低下、続いてcAMP-CRP複合体形成の阻害によってaraBADプロモーターの活性は強力に抑制されます。このシステムは目的の遺伝子に大腸菌への毒性もしくは増殖阻害作用がある場合に特に役に立ちます。
すべてのpBADベクターはプラスミドの維持効率を最大化するよう設計された大腸菌株(Stbl3など)に導入された状態で供給されます。目的遺伝子を発現させるためにプラスミドをL-アラビノース代謝経路の遺伝子を欠損した株(TOP10など)に移しかえることができます。これによってL-アラビノースが時間経過によって分解されることなく、安定した遺伝子発現を得られます。もし遺伝子の発現の“漏れ”をグルコースによって強力に抑制したい場合は、LMG194株が利用できます。LMG194株は最小培地(RM培地)での増殖が可能でグルコースによるaraBADプロモーターのさらなる抑制制御を可能にします。