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CRISPRとTALENどちらをゲノム編集に使うべき?

CRISPRとTALENは両方とも培養細胞およびモデル生物のゲノム編集用途に開発されました。どちらも遺伝子のノックアウトや点変異、挿入のノックインに使用できますが、いくつか違いがありそれぞれ長所と短所があります。

メカニズム
  • CRISPR

    CRISPRは部位特異的ガイドRNA(gRNA)を利用して、Cas9ヌクレアーゼにゲノム内の標的部位のDNA配列を切断させます。標的部位は通常およそ20bpの長さであり、数塩基の配列の違いがあっても認識されて切断されてしまうことがあります。

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  • TALEN

    TALENは、FokIヌクレアーゼドメインに融合したTALエフェクターDNA結合ドメイン(特異的配列を認識する)で構成されるキメラタンパク質を2つで一対のペアとして利用します。タンパク質のペアは、14‐20bp(スペーサー領域)を挟んだ2つの標的部位(∼18bp)に結合するように設計されています。標的部位DNAに結合すると、Foklヌクレアーゼドメインは二量体を形成し、続いてスペーサー領域のDNAを切断します。

効率

CRISPRとTALEN両方とも効率良くゲノム編集できますが、用途、動物種、細胞タイプによって効率は大きく変わります。一般に、CRISPRはTALENよりも効率的に細胞内に導入され、DNAを切断します。

オフターゲット効果

CRISPR gRNAは∼20 bpの配列を標的とし、一方TALENペアは、合計∼36bpの標的配列に結合します。Cas9/gRNA複合体はTALENよりも標的配列とミスマッチがある配列(最大で5bpまで)に結合する可能性があります。したがって、TALENによる切断はCRISPRよりもオフターゲット切断の可能性は低く、高い特異性があります。CRISPRを培養細胞株につかうとオフターゲット効果がみられますが、CRISPRノックアウトマウスの分析からCRISPRを生体につかった場合(in vivo)、オフターゲット効果の頻度は低くなることが報告されています。近年のCRISPRシステムの改良によりCRISPRの特異性は大幅に上昇しました。変異触媒ヌクレアーゼドメイン(例えばCas9_D10AもしくはCas9_H840A)を含むCas9ニッカーゼをデュアルgRNAと一緒に使用することで標的領域の内で2つの一本鎖DNAニックが生成され、ダブルニックDSB(二重鎖破壊)ができます。このデザインでは2つのgRNAを使うことで標的配列が∼40bpに拡張され、オフターゲット効果が起こる可能性を最小限にできます。

標的配列の必要条件

TALENはゲノム内のほぼすべての配列を特異的な標的にできます。一方、CRISPRはgRNA標的配列の3'末端にPAM配列(通常NGG)が必要となります。遺伝子のノックアウトのみが目的ならばCRISPRを使っても支障はありませんが、遺伝子の特定の部位での切断を必要とする部位特異的突然変異または挿入を導入するときに問題があります。CRISPRを使って特定のゲノム部位に正確な編集をするならば、相同組換えドナーベクターまたは編集標的配列の近傍配列を含むオリゴヌクレオチドをgRNAとCRISPRを共に細胞に導入することで、HDR(相同性組み換え修復)を引き起こして標的部位を正確に編集する方法があります。

シンプルさ

シンプルさでは、CRISPRはいくつかの点でTALENより優れています。第一に、ベクター構築の時に、CRISPRのCas9/gRNA複合体の標的への結合は単純なRNA/DNAハイブリダイゼーションに依存するため、短いgRNAをデザインするだけですが、TALENはタンパク質とDNAの相互作用ごとに特別なTAL DNA結合ドメインの再エンジニアリングを必要とします。そのため、gRNAの設計は、標的配列毎に常に 2つのベクターを必要とするTALENよりも安くて簡単です。しかし、ベクタービルダー社が用意したTALEN認識モジュールはTALENベクターの設計作業を大幅に削減できます。第二に、マウス胚への注入などの一部のアプリケーションにおいてCas9タンパク質およびgRNAの直接注射による効率的な導入が可能ですが、TALENでは同様のことをできません。第三に、CRISPRは、数千の異なるgRNAを発現するCRISPRライブラリーを作成し、ハイスループットでスクリーニングすることが容易であるため、汎用性の高い遺伝子スクリーニングが可能です。

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