ベクタービルダー社におけるウイルスタイターの計測法は?

ウイルスベクターが蛍光レポーター遺伝子をもつ場合、ウイルス粒子の精製後、まず始めに293Tや293Aなど一般的な細胞にウイルスを導入して蛍光タンパク質の発現を観察することで品質を確認します。ウイルスのタイプに応じて様々な方法でタイターを定量します。蛍光の観察と定量性検査の結果が一致しない場合は再検査と追加の検証を行うことで、当社のウイルスが高品質であることを確認します。

レンチウイルス

レンチウイルスのタイター検定のために、始めにストックから段階希釈したレンチウイルスをHEK293細胞に感染させます。つぎにqPCRを利用して宿主細胞ゲノムのコピー数(BMP2のコピー数を代用)あたりのウイルスゲノムの平均挿入コピー数(WPREのコピー数を代用)を計算することでウイルスストックのタイターを算出します。この方法によって感染能力を持ったウイルス粒子のタイターを正確に測定できます。レンチウイルスのタイターを計算する別の方法もあります。ウイルスゲノムRNAを抽出し、RT-qPCRによって物理的なタイターを計測する方法です。この方法には欠点があり、感染能を持った生きたウイルス粒子も死んだウイルス粒子も区別しないで測定してしまうためにタイターを過剰(10倍、場合によっては100倍以上)に測定します。レンチウイルスが‐80℃以下で保存されていない、もしくは繰り返し冷凍‐解凍されると急速に不安定化して感染能力を失うために、この欠点はより深刻なものになります。別の方法では、ウイルスベクターと共に導入された蛍光マーカーや薬剤選択マーカーの発現を指標として形質転換した細胞数を計測します。この方法では蛍光もしくは薬剤選択マーカーは宿主細胞内におけるサイレンシング等の理由から検出可能レベルで発現しない可能性があることや、ウイルスの多重感染の可能性があるので、タイターを大幅に過小評価することがあります。

アデノウイルス

当社はアデノウイルスでも感染能力をあるタイターを測定しています。段階希釈したアデノウイルスをHEK293細胞に感染させた後、形質転換してアデノウイルス由来のヘクソン(hexon )タンパク質を発現している細胞の数を免疫細胞染色によって調べます。細胞への感染は多重感染度が非常に低い条件でおこなわれているので、各々の形質転換細胞は一つのウイルス粒子によって感染されていると保証できます。この方法は従来のプラークアッセイの結果と良い相関性を示します。感染能を持つタイターと超高純度のアデノウイルスの光学濃度の間には高い相関があるので、高純度のアデノウイルスのタイターの検定には光学濃度(DO260)を測定します。レンチウイルスとは違い、アデノウイルスは非常に安定しています。長期間室温で保存された後でも、当社で作製したウイルス粒子は基本的にすべて生存して感染能を保持しています。

アデノ随伴ウイルス(AAV)

AAVの物理的タイターは溶解したウイルスからウイルスゲノムを抽出し、qPCRを使ってウイルスゲノムのコピー数(ITR領域のコピー数を代用)を正確に計測します。レンチウイルスとは違い、AVVウイルス粒子はとても安定しています。別の方法を使ったタイターの検定サービス(ddPCRやTCDI50)もご利用になれます。

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