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My Favorite Building Block   |   2023年08月02日

多様なウイルスシステムから、どうやって選びますか?

遺伝子デリバリー実験を計画する時には、まずウイルスベクターか非ウイルスベクターのどちらを使うのかを検討します。多くのウイルスベクターには多くの種類(レンチウイルス、自己不活性型MMLV、ガットレスアデノウイルス等)があります。ウイルスベクターの非常に多くの選択肢の中から、一番適しているものをどうやって選びましょうか?

ウイルスか非ウイルスか?

ウイルスベクターか非ウイルスベクターの選択は、使用する細胞に大きく依存します。従来の非ウイルスベクターのトランスフェクション法としてはエレクトロポレーション、プラスミドのインジェクション、トランスフェクション試薬などがありますが、小規模で少ない細胞数でのin vitro用途が主となります。また、分化細胞では細胞骨格変化、増殖能の減少、ヌクレアーゼ発現の上昇などの多くの要因のためにトランスフェクションが困難なります。最近では脂質ナノ粒子(LNP)を用いたプラスミドやmRNAを導入するリポフェクションなども利用できます。リポフェクションはCOVID-19 mRNAワクチンにも利用され、様々な治療法への応用も期待されています。しかし、組織特異的な導入ができない、安定性が低い、導入した遺伝物質の持続時間が短いなどの制限も存在しています。

In vivoでの使用、長期にわたる安定発現が必要な場合やトランスフェクションが難しい細胞ではウイルスベクターが適しています。10種以上のウイルスベクターシステムのうち、どれが実験に適しているのかを判断するための材料としては実験目的、使用細胞、発現させる遺伝子のサイズなどが挙げられます。

恒久的発現なら

使用するウイルスベクターシステムを決めるため、まずは遺伝子を安定的に導入したいのか、一過的な発現が必要なのかを検討してください。下の表にあるように、ベクターをゲノムに組み込んで安定発現させたい場合はレンチウイルスやガンマレトロウイルスが候補になります。レンチウイルスは感染対象が広く、増殖細胞と非増殖細胞の両方に感染できることから研究および臨床応用の両方でよく使われます。最近FDAによって認可されたβ-サラセミア治療薬ジンテグロにも利用されています。

MMLV(Moloney Murine Leukemia Virus)やMSCV(Murine Stem Cell Virus)の様なガンマレトロウイルスも研究用途によく使われますが、幾つかの制限があります。まずは、ウイルスゲノムを挿入することができるのは、活発に分裂している細胞に対してのみです。加えて、ウイルスタイターが低くなる傾向があり、搭載可能DNAサイズの制限がレンチウイルスよりも小さくなります。レンチウイルスのDNAサイズの制限が6.4kbであることに対して、MMLVは5.5kb以下、MSCVは6.1kbとなります。基本的にMMLVとMSCVの導入遺伝子はウイルス性プロモーターから発現されますが、自己不活性化MMLV(SIN MMLV)では任意のプロモーターが使用できます。MMLVはiPS細胞の作製に有用で、MSCVは造血幹細胞(HSC)への遺伝子導入に適しています。

一過性発現が希望なら

多くの実験にはゲノムへの安定挿入は必要ではありません。ゲノムへの挿入を起こさないウイルスは導入遺伝子を含むウイルスゲノムを染色体外もしくはエピソームとして維持します。トランスダクションされた細胞が分裂をすることによってウイルスゲノムは次第に減少していきます。標的細胞が分化している場合や、短期間のみ発現が欲しい場合にはこれらののウイルスは優れた選択肢となります。形質導入された細胞が分裂を続ければ、組換えウイルスのゲノムは時間とともに希釈され、発現量は減衰していきます。しかし、標的細胞が完全に分化している場合、あるいは短期間の発現が必要な場合には、これらのウイルスは優れた選択肢となる。

このタイプのウイルスにはアデノウイルスアデノ随伴ウイルス(AAV)があります。どちらのウイルスも増殖、非増殖細胞に感染できますが、たくさんの違いがあります。それぞれの長所、短所を以下の表にまとめました。長所を伸ばして短所を減らすために、どちらのウイルスシステムも研究開発が続けれられています。例えば、アデノウイルスの指向性を改善するキメラAd5/F35アデノウイルスや、搭載可能DNAサイズを向上させるガットレスAd5などがあります。AAVでは、感染特異性を高めて遺伝子発現量を高めるための新規セロタイプの探索が活発です。

Advantages Disadvantages
アデノウイルス
  • 搭載可能DNAサイズが大きい (7.5-33 kb)*
  • 高れべる発現
  • 免疫原性が高い
  • 広い指向性をもつが、トランスダクションが難しい細胞タイプがある**
AAV
  • 免疫原性が非常に低い
  • 免疫原性が非常に低い
  • 遺伝子の発現が長持ちする
  • 搭載可能DNAサイズが小さい (4.2 kb)
  • 発現量が低い傾向

** 内皮、平滑筋、分化気道上皮、末梢血細胞、神経細胞、造血幹細胞

これらの一般的な選択肢以外にも、ワクチンや腫瘍溶解性ウイルスのような用途をもつ魅力的なウイルスシステムがあります。水疱性口内炎ウイルス(VSV)ワクシニアウイルス(VACV)単純ヘルペスウイルス(HSV)は一般に大きな搭載可能DNAサイズ(それぞれ11、30、150kb)を持ちます。どのウイルスも免疫原性が高く、ワクチン開発や免疫システムの活性化などに使用できる可能性があります。VSVは伝統的にウイルス侵入機構の研究に用いられていますが、近年、組換えVSVを利用したワクチン開発が注目を集めています。VACVは1800年代に天然痘ワクチンとしての利用によって有名になりましたが、様々な弱毒化、腫瘍溶解活性、様々な疾患のワクチンとしての可能性を持つ多くの株が開発されています。同様に強力な神経向性によって、HSVは神経結合の研究を含む様々な分野で利用され、その対象は癌治療やワクチン投与にまで広がっています。

ウイルスベクターの使用方法には無限の選択肢があります。これらのシステムの多くは、誘導性、条件付き発現誘導システムと組み合わせることができます。以下の図は、一般的なウイルスベクターの概要を示しています。実験用途、使用細胞、搭載DNAサイズなどを考えながら、最も効率的で包括的なアプローチを決定してください。

Sources

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