mRNA 遺伝子デリバリーソリューションズ
ベクタービルダーはmRNA医薬(ワクチン、遺伝子編集、キメラ抗原受容体(CAR)、細胞または胚内でのタンパク質発現)の包括的な開発ソリューションを提供しています。RNA設計と生産に豊富な経験をもつ弊社チームはin vitro転写用ベクターの設計および作製、in vitro mRNA転写(IVT)、脂質ナノ粒子(Lipid Nanoparticle, LNP)パッケージング、in vitro/in vivo機能試験のサポートを通じて、お客様のmRNAワクチンや遺伝子医薬法開発を加速させます。mRNA治療法のための大容量の製造については、CDMOサービスにて詳細をご確認いただけます。既製品のmRNA製品については、IVT mRNAとLNP-mRNAをご覧ください。
サービスの詳細
IVTベクターデザイン&クローニング
- 商業利用のための知的財産権(IP)の制約の無い、特許権フリーのIVTバックボーンを使用
- 高発現のための配列最適化
- 5’ および 3’ UTR
- コード配列
- コザック配列
- 高発現を実現するために120 nt(またはそれ以上)のポリAテールを用い、幅広いクローニングと転写を実現
IVT mRNA & LNP 製造
図 1. 通常のmRNA合成とLNPカプセル化のワークフロー。
- ベクタークローニングからLNPカプセル化まで最短で5週間
- mRNA合成と自己複製型RNA (saRNA) は長さは10,000 nt まで、容量はμg単位からg単位まで受注可能
- 共転写または酵素による高キャッピング効率 (上限99%)
- in vivoにおける免疫応答や幅広い発現を実現させるための修飾ヌクレオチド
- m1Ψ
- m5C
- 5moU
- 独自の精製技術で以下の不純物を迅速かつ効率的に除去しています:
- IVT DNA テンプレート
- 中途半端に転写されたmRNA 産物
- 残存タンパク質
- 二重鎖RNA (dsRNA)
- · 従来作製方法とカスタム作製方法による高品質LNP:
- 高いカプセル化効率
- 低い多分散インデックス (PDI)
- 安定性の改善
- デリバリー効率の向上
- 抗体結合による適合性(Ab-conjugation)
品質管理 (QC)
VectorBuilder では、IVT mRNAとLNPカプセル化において非常に多くの品質管理検査をご提供しています。通常は✓マークの入った標準品質管理検査項目は常時遂行されています。個々のプロジェクトに合わせた追加の品質管理検査もオプションで承っています。
IVT mRNA
LNP encapsulation
属性 | 検査項目 | リサーチ- グレード | GMP-like | |
---|---|---|---|---|
アイデンティティ(特異性) | mRNA配列 | サンガーシークエンシング | √ | √ |
mRNAの長さ | 変性アガロースゲル電気泳動 | √ | √ | |
キャピラリーゲル電気泳動 (CGE) | オプション | √ | ||
一般/物性 | mRNA 濃度 | UV 分光光度法 | √ | √ |
RiboGreen アッセイ | オプション | √ | ||
外観 | 目視確認 | オプション | √ | |
有効性 | 遺伝子発現 | In vitro転写後にウェスタンブロッティング | オプション | オプション |
細胞へのトランスフェクション | オプション | オプション | ||
安全性 | 無菌性 | バイオバーデン試験 | オプション | √ |
マイコプラズマ | 培養法 | オプション | √ | |
qPCR | オプション | オプション | ||
エンドトキシン | キネティッククロモジェニック | オプション | √ | |
純度 | mRNA 安定性 | 変性アガロースゲル電気泳動 | √ | √ |
キャピラリーゲル電気泳動 (CGE) | オプション | √ | ||
A260/280 | UV 分光光度法 | √ | √ | |
Capping 効率 | LC-MS | オプション | √ | |
のサイズ分布 | LC-MS | オプション | √ | |
残存 dsRNA | ドットブロット法 | オプション | √ | |
残存テンプレートDNA | qPCR | オプション | √ | |
残存タンパク質 | NanoOrangeアッセイ | オプション | √ | |
残存試薬 | ガスクロマトグラフィー | オプション | オプション |
属性 | 検査項目 | リサーチ- グレード | GMP-like |
---|---|---|---|
カプセル化効率 | RiboGreenアッセイ | √ | √ |
粒子サイズ, PDI | Dynamic light scattering (Zetasizer) | √ | √ |
表面電荷 | Dynamic light scattering (Zetasizer) | √ | √ |
機能の評価・検証
- 当社のハイスループット化したクローニング、合成、そして試験/検証プラットフォームによって、GOI発現への異なる配列(UTRs、コーディング配列、ポリA、コザック配列、など)の影響を検証し、最適化しています。
- 抗原提示、抗体産生、CAR発現、そしてCRISPRなど、様々な用途に合わせて機能評価系を確立しています。
- げっ歯類や非ヒト霊長類の動物モデルを用いて、LNP-mRNA遺伝子デリバリーの有効性と安全性を評価しています。
技術情報
IVTベクター配列の最適化
- UTR
- コーディング配列
- ポリAテール
- コザック配列
図 2. mRNA発現を改善するUTR配列の条件検討と最適化。グアシアルシフェラーゼの最大発現量を達成できるmRNAを最適化するために、異なるUTRの組み合わせを検証した。293T細胞をウェル当たり2.3×105個の密度で12ウェルプレートに播種した。1ウェルあたり1ugのmRNAを細胞にトランスフェクトした。トランスフェクション後6時間、24時間、48時間、72時間、96時間で、培地20ulを採取し、ガウシアルシフェラーゼ活性を定量した。
図 3. mRNA発現量はin vitro および in vivoでコドン最適化によって増加する。(A)HEK293T細胞におけるHiExpress™ Firefly Luciferase mRNAおよび他のルシフェラーゼmRNAの発現。12ウェルプレート上で増殖させた細胞に、1ウェルあたり0.5ugのmRNAをトランスフェクトし、ルシフェラーゼ活性をトランスフェクション後6時間、24時間、48時間、72時間で測定した。(B)成体C57BL/6マウスに30ugのLNPカプセル化mRNAを筋肉内注射し、注射後6時間、24時間、48時間にルシフェラーゼ活性を測定した。FLuc WTは野生型ホタルルシフェラーゼを示す。FLuc WT(co)はコドン最適化された野生型ホタルルシフェラーゼを示す。FLuc2はLuc2ホタルルシフェラーゼを示す。
図 4. ポリA サイズの解析. リボヌクレアーゼT1を用いてmRNAからポリAテールを切断し、オリゴdTアフィニティークロマトグラフィーで分離した。抽出されたテールはLC-MSで分析され、一塩基分解能でポリAテールの長さの情報が得られた。(A) Urea-PAGEによるポリAサイズ分析。60ngの消化されたmRNAポリAは120ntと150ntのサイズが予想され、変性尿素ポリアクリルアミドゲル電気泳動にて解析した。(B) LC-MSによるポリAサイズ分析。120pmolのmRNAポリA (予想サイズ120nt) からデコンボリューションしたスペクトル。(C) 予想サイズ120ntのポリAテールのサイズ分布。棒グラフは、ポリAテールに小さな不均一性があることを示している。エラーバーは3回の消化実験の標準偏差を表す。加重平均長さは123 ntである。
図 5. ゼブラフィッシュ EGFP IVT mRNA 250 pg のマイクロインジェクション後 6 時間の EGFP 発現について、1 細胞期のゼブラフィッシュ胚をスクリーニングした。蛍光画像から、最適化された コザック配列(version 2)によって、in vivo での EGFP 発現が増加することが示された。
IVT mRNA合成最適化
- IVT mRNA強度(安定性)
- 共転写と酵素によるキャッピング
- ヌクレオチド修飾
- dsRNA 除去
図 6. 変性アガロースゲル電気泳動による結果はIVT mRNAは10,000 nt以上であり、非常に高い安定性が保たれていることを示す。
図7. LC-MS-によるキャッピング効率の解析。(A)共転写または(B)酵素的アプローチにより、高効率のキャッピング(99%以上)が達成できる。
図 8. ヌクレオチドの最適化によるmRNA発現の増加とdsRNA不純物の減少。(A)293T細胞におけるホタルルシフェラーゼの発現。修飾ヌクレオチドであるN1-メチルシュードウリジン(m1Ψ)と5-メチルシトシン(m5C)の有無により、種々のmRNAを作成した。12ウェルプレート上で増殖した細胞に、ウェルあたり1ugのmRNAをトランスフェクトした。トランスフェクション後6時間、24時間、48時間における293T細胞のルシフェラーゼ活性を測定した。エラーバーは標準偏差を示す。(B) ヌクレオチド修飾(m1Ψ)有り、または無しで、磁性ビーズで精製したEGFP IVT mRNAを等量(1ドットあたり750 ng)ブロットし、その後ドットブロットアッセイで検出し、dsRNAの不純物を推定した。
二本鎖RNA(dsRNA)はIVTの副産物であり、できる限り避けたい高免疫原性の主な原因となる。ドットブロットの結果は、非常に低レベルのdsRNAで超精製スケールを達成するためには、精製工程(例えばIP-PR)の追加が必要であることを示している。
図 9. 精製工程の違いによるdsRNA除去効率。異なるプロセスで精製した hSpCas9 IVT mRNA を等量(1500 ng/ドット)ずつブロットし、ドットブロットアッセイで検出し、dsRNA の不純物を推定した。HIC, 疎水性相互作用クロマトグラフィー; IP-RP, イオンペア逆相液体クロマトグラフィー
LNP-mRNA QCデータ
VectorBuilderは、LNP-mRNA製品の均質性、安定性、有効性を確保するためにカプセル化技術を最適化してきました。
- TEM
- 多分散インデックス(PDI)とゼータ電位
Cryo-TEMの結果は、当社LNP-mRNAの構造的完全性とサイズの均一性を示している。
図 10. LNP-mRNAのクライオ透過電子顕微鏡(cryo-TEM)像。スケールバー=100 nm。
動的光散乱(DLS)分析によると、当社のLNP-mRNA製品は非常に低いPDI値(PDI<0.1)に達していることが示されています。さらに、VectorBuilderはすべてのLNP-mRNA製品について、ゼータ電位が-10 mVから+10 mVの間であることを保証しています。
図 11. 粒子サイズとゼータ電位の分布。PDI(A)とゼータ電位(B)は、粒子の運動により変動する光の強度差を測定するDLSにより決定した。試料のゼータ電位は-1.872 mVから+1.872 mVの間である。
LNP-mRNAの機能検証
- in vitro におけるLNP-mRNA発現
- in vivo におけるLNP-mRNA発現
図 12. LNPによる高いmRNAデリバリー効率。EGFP mRNAをLNPカプセル化して細胞導入した場合、市販のトランスフェクション試薬で細胞導入した場合に比べ、より高いEGFP発現が確認された。1ugのEGFP mRNAを細胞にトランスフェクションし、その24時間後に(A)Jurkat細胞および293T細胞におけるEGFP発現のフローサイトメトリー分析、および(B)293T細胞における蛍光イメージングを行った。EGFP mRNAのヌクレオチドはいずれも未修飾のものを使用した。MFI(median fluorescence intensity)は平均蛍光強度を示す。
図 13. マウスにおけるルシフェラーゼ(Luc) mRNAの発現とmRNAに対する免疫反応。(A)インジェクション後6、24、48時間経過後のルシフェラーゼ活性のライブイメージング像。(B)インジェクション後48時間経過後の血清における炎症性サイトカイン、IL-6とTNG-αの定量をした。エラーバーは標準誤差を示す。マウス: C57BL/6J、8週齢、投与方法:筋肉内注射(C) Balb/cマウスにmRNA-LNP(antigen A, antigen B, PBSコントロール) 30ugを筋肉内注射し、14日後の脾臓細胞のIFN-γ ELISpotアッセイ結果。
抗体結合LNP-mRNA
図 14. LNPに抗体を結合させたことによるLNP-mRNAの生体内分布への影響。抗体コンジュゲーションは用量依存的に肺へのターゲティング効果を増加させる。FLuc LNP-mRNA を静注したC57BC/6Jマウス (6-8週齢, メス) の組織のホタルルシフェラーゼ(FLuc)の発現を示す代表的なバイオ発光画像。ネイキッドIVT mRNAはネガティブコントロールとして、IgG2a標識Fluc LNP-mRNAはアイソタイプコントロールとして使用した。
関連印刷物
化学物質等安全データシート (MSDS) 品質検査証明書 (Certificate of Analysis, COA)ユーザーインストラクション
フライヤー(チラシ)
ご注文方法
Q&A
キャップ0はN7-methylguanosine (m7G)を意味し、5‘-三リン酸結合を介して真核生物mRNAの5’末端側に付加されます。この修飾は一連の酵素反応を経て転写反応と同時に起こり、真核生物翻訳開始因子(eIF4E)に認識されることによってmRNAの核輸送、転写産物の安定化、翻訳反応の増進に機能します。キャップ1はmRNAへのm7G(キャップ0)付加に続いて、最初のヌクレオチド(m7GpppNm)上の2’Oへのメチル基の付加を意味します。哺乳類では、キャップ1の構造はmRNAが自己のものとして自然免疫を回避するためのマーカーとして重要となります。キャップ1を合成mRNAに付加することで、mRNAのin vivoでの翻訳効率の上昇と免疫原性を低下させることができます。
In vitro転写mRNAのキャップはキャップアナログを使用して転写反応中に付加するか、転写反応後の酵素反応によって付加する方法があります。弊社はどちらの方法にも対応しており、キャッピング効率はLC-MS使用して詳細に検査されます。お客様の希望するキャップ方法に依存して、それぞれに対応したIVT mRNAベクターバックボーンへのクローニングを提案しています。
細胞は細胞質とエンドソームにRNA受容体をもち、外来性RNAを検出して免疫反応を引き起こします。修飾ヌクレオチドは内在性RNAに共通して存在しています。特定の修飾ヌクレオチドをIVT mRNAへ取り込ませることで免疫原性の低下、二次構造の変更、翻訳効率の増加、配列依存性の半減期を伸ばすことができます。弊社ではN1-Methylpseudouridine (m1Ψ)や5-Methylcytosine (m5C)を含む、様々な修飾ヌクレオチドを用意しております。N1-Methylpseudouridineや5-Methylcytosineは自然界に存在するヌクレオチドであり、初めにtRNAで見つかりましたが、タンパク質をコードするmRNAにおける機能は近年になって評価されるようになりました。これらのウリジンやシトシンのメチル化派生物は古典的なワトソンークリック塩基対形成に影響を与えることがないので、mRNA in vitro合成および翻訳反応において従来のヌクレオチドを置き換えることができます。このように、mRNA医薬はRNA免疫受容体による認識を回避して免疫反応を低減させ、mRNAの安定性と翻訳効率を高めることができる大きなアドバンテージを持っています。