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注目のサイエンス   |   2023年06月21日

セロタイプとは?AAVバリアントの性質を解読する

AAVは研究や臨床目的での遺伝子デリバリー技術として注目を集めています。しかし、初めてAAVを使うときには、どのセロタイプを選ぶべきかはなかなか決められません。多くの出版論文から判断できることもありますが、誰も実行したことのない実験をしなくてはいけないケースも存在します。本稿では、それぞれのAAVセロタイプの違いやどの細胞を標的にすべきか、そしてVectorBuilderの製品がどのように新しくAAVを使う研究者をサポートするのかについて詳しく掘り下げます。

セロタイプとは?

セロタイプは表面の抗原に基づいて分類された微生物種のサブタイプです。AAVの様なウイルス種においては、セロタイプはウイルスの抗原性を決定するカプシドタンパク質のバリエーションを意味します。AAVキャプシドはcap遺伝子によってコードされるVP1、VP2、VP3構造タンパク質分子が相互作用によって60ほど集まった構造をしています。

遺伝子レベルでの各セロタイプのカプシドタンパク質の相同性レベルは様々ですが、基本的に保存されたゲノム構造をしています。AAVセロタイプのカプシドの立体構造も基本的に類似性が高く、定常領域と可変領域を含む正20面体構造です。

AAVカプシドの定常領域は様々なセロタイプの間で高度に保存されています。定常領域は、AAVカプシドの組み立てと維持に重要な役割を果たし、AAVゲノムのパッケージングに重要な機能を果たします。AAVカプシドの可変領域の配列には大きなバリエーションが存在し、受容体結合ドメイン、抗原部位、表面ループ、組織向性、ひいてはAAV血清型に多様性をもたらします。

図1. AAVカプシドの定常領域(青色)と可変領域(黄色)の模式図

AAV2カプシドタンパク質の可変領域は研究が進んでおり、表面ループがヘパラン硫酸プロテオグリカン(HSPG)レセプターとの結合に関与することがわかっています。可変領域の表面ループのアルギニン残基がカプシドとHSPGレセプターとの相互作用に必要です。表面ループをAAV5セロタイプの同等の配列に置き換えると、ウイルスDNAのパッケージングは可能ですがが感染能力を失います。結論として、カプシドタンパク質の可変領域はそれぞれの血清型に固有の感染指向性を決定する役割を持ちます。

組織特異性とカプシド進化

上述したように、カプシドタンパク質にバリエーションがあるため、異なる細胞レセプターに結合する能力が異なり、その結果、特定の細胞型、組織、臓器に対する特異性が生まれます。HSPG受容体はほとんどの細胞種の表面に広く発現しているため、注入経路にも依存しますがAAV2は肝臓、筋肉、脳、腎臓、網膜、膵臓など様々な組織に対して感染できます。また、AAV2はFGFRやインテグリンのような受容体膜タンパク質と相互作用することで、ウイルスの細胞への付着と侵入を活性化することが出来ます。AAV2カプシドとは異なり、AAV9カプシドは細胞侵入の一歩としてガラクトースと相互作用し、AAV1,5,4,6カプシドはシアル酸プロテオグリカンと相互作用します。このように細胞の受容体と共受容体に対して指向性が異なることによってAAVセロタイプの指向性が決定されます。

図2. AAV2の受容体結合と細胞侵入の概要

様々な組織指向性と性質を持つAAVセロタイプが発見されているため、免疫回避、組織指向性、組織特異性、カプシド内在化効率の増加をもたらす新しいAAVセロタイプの探索に多大な努力と研究が費やされています。合理的デザイン、もしくは多様なアプローチで構築された大規模AAVカプシドライブラリーのスクリーニングなどが行われています。

AAVセロタイプの合理的デザインの例として、AAV2-QuadYFカプシドが挙げられます。AAV2-QuadYFは、ユビキチンを介したプロテアソーム分解に対するAAV2の感受性を低下させ、細胞核に導入遺伝子を効果的に送達できるカプシドの数を増やします。AAV2-QuadYFカプシド上の4つのチロシン(Y)残基をフェニルアラニン(F)残基に変異させることで、カプシド構造を維持しながらアミノ酸のユビキチン化を避けることが出来ます。AAV2-QuadYFセロタイプを用いた研究で、細胞導入効率と導入遺伝子発現量の増加が確認されています。

AAV2-QuadYFとは対照的に、AAV-DJはAAVカプシドライブラリーの構築とスクリーニングによって開発されました。このAAVカプシドイブラリーは、複数AAVセロタイプのCap遺伝子間のDNA shafflingによって作製されました。ライブラリーを用いた脳組織でのスクリーニングが繰り返され、元のAAVセロタイプと比べてより高い特異性で中枢神経系に感染できる新規セロタイプが見出されました。これまでに複数のAAVライブラリーの作製方法が報告されており、求めるAAVカプシドの特性に応じて適切なスクリーニングが実行できます。

実験に適したセロタイプの見つけ方

AAV実験を始める時、様々なAAVセロタイプの特性や指向性についての文献を全て確認することは非常に大変です。まだ誰も発表していない実験をデザインする場合、適したセロタイプを選択することは不可能とも思えるかもしれません。実験に適したAAVセロタイプを選び出す方法としては、レポーター遺伝子の発現を用いて、顕微鏡やフローサイトメトリーによって異なるセロタイプのトランスダクション効率を比較することです。

VectorBuilderのAAVセロタイプテストパネルは3つ以上のAAVセロタイプを自由に選んで小規模なテストすることが出来る、マーケットで唯一のAAVセロタイプ検査用キットとなります。関連論文とカスタマイズしたセロタイプテストパネルを活用することで、in vitroもしくはin vivo新規AAV実験に最適なセロタイプを決定できます。AAV実験を立ち上げることを啓作されているのであれば、AAVセロタイプテストパネルのウェブページをご覧ください。

参考文献

Opie SR, Warrington KH Jr, Agbandje-McKenna M, Zolotukhin S, Muzyczka N. Identification of amino acid residues in the capsid proteins of adeno-associated virus type 2 that contribute to heparan sulfate proteoglycan binding. J Virol. 2003 Jun;77(12):6995-7006. doi: 10.1128/jvi.77.12.6995-7006.2003. PMID: 12768018; PMCID: PMC156206. 

Meyer NL, Chapman MS. Adeno-associated virus (AAV) cell entry: structural insights. Trends Microbiol. 2022 May;30(5):432-451. doi: 10.1016/j.tim.2021.09.005. Epub 2021 Oct 25. PMID: 34711462. 

Gray SJ, Blake BL, Criswell HE, Nicolson SC, Samulski RJ, McCown TJ, Li W. Directed evolution of a novel adeno-associated virus (AAV) vector that crosses the seizure-compromised blood-brain barrier (BBB). Mol Ther. 2010 Mar;18(3):570-8. doi: 10.1038/mt.2009.292. Epub 2009 Dec 29. Erratum in: Mol Ther. 2010 May;18(5):1054. PMID: 20040913; PMCID: PMC2831133.

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