プライマーデザイン
ベクタービルダーのプライマーデザインツールは、効率よくPCRに適した特異性の高いプライマーをデザインできます。得られたPCR産物は クローニング・シークエンス解析・ CRIPSRゲノム編集などその後の解析に使用できます。
ベクタービルダーのプライマーデザインツールは使い勝手が良く、細かく設定が可能なため、最適なプライマーをデザインができます。長さ・GC含量・融解温度(Tm)・二次構造のとりやすさ・特異性などの、 PCRプライマーの重要なパラメータを最適化することがDNAの確実な増幅につながります。 直感的な操作で初心者からプロの研究者まで誰でも簡単にプライマーをデザインできます。PCRのトラブルシューティングについては こちら をご参照ください。
プライマーの基本
現代の分子生物学においてはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって、DNA断片を何百万コピーにも増やし、 またその配列を変えることも可能です。PCRではテンプレートの標的配列の5’と3’末端と相補的な配列をもつ、 短い一本鎖DNA(プライマー)を用意します。このプライマーは末端の相補的な配列と結合し、 それを足掛かりにDNAポリメラーゼがDNA複製を開始します。 この複製プロセスが何度も起こると生じた新しいDNA鎖もまた新たなテンプレートとなります(Figure 1)。 このプライマーの結合とDNA鎖の伸長が繰り返し続くことで、わずか数時間のうちに標的配列のDNA断片が何百万コピーにも増幅されます。
PCRで増幅されたDNA断片はその後、 クローニング・シークエンス解析・ CRISPRゲノム編集などの解析に利用されます。 そのため、正確かつ効率的に標的配列を増幅するため、ひいては以降の解析を失敗しないためにも、 適切なプライマーデザインは必要不可欠です。このミニ講座では有効なプライマーをデザインするために重要な検討事項やヒントを述べます。
Figure 1. Steps in polymerase chain reaction (PCR).
プライマーデザインのガイドライン
プライマーの長さと特異性プライマーの長さは通常18-25塩基に設定されます。 プライマーの配列は標的配列と異なる領域が増幅されることを防ぐためにユニークな配列でなければなりません。 プライマーが短すぎる場合、特異性が失われ非特異的な増幅が起こる可能性が高まります。 一方で、プライマーが長すぎるとヘアピン構造やプライマーダイマーのような二次構造を形成することがあります。 ヘアピン構造はプライマーが折り返すことで生じ、プライマーダイマーはプライマーと標的配列とではなく、 プライマー同士が結合することで生じます。これら二次構造はプライマーの標的配列への結合を妨げ、DNA増幅プロセスを阻害してしまいます。
GC含量プライマーの配列に含まれるグアニン(G)とシトシン(C)の割合はプライマーの結合に影響します。 これはGとCの間に存在する3本の水素結合が結合安定性に寄与するためです (対してアデニン(A)とチミン(T)の間には2本) 。 理想的なGC含量は40-60%ですが、GC含量が高すぎると融解温度 (Tm) が高まり増幅効率が低下することがあります。 一方で、GC含量が低すぎるとプライマーの結合安定性が弱まり結合しにくくなります。 GC含有率計算 を使えばプライマーや配列内のGC含量をチェックすることができます。
融解温度 (Tm)Tmは反応系内の半分のプライマーがテンプレートDNAに結合している状態の温度で、 結合していない残り半分のプライマーは一本鎖DNAの状態で存在しています。プライマーの理想的なTmは55℃~65℃とされます。 プライマー間のTm差を小さくする、理想的には2~3℃以内に収めると、プライマーごとの結合と伸長が揃うため、効率的な増幅が可能になります。
3’末端のデザインプライマーの3’末端はDNAポリメラーゼがDNA合成を始める重要な場所になります。 一般的には3’末端にGかCが2つ以上並ぶのを避けることが推奨されます。これは3’末端が過剰に結合しやすいと非特異的増幅を招くリスクが増大するためです。 GCの偏りのない3’末端の配列にすることで効率良く正確にプライマーが伸長します。
適切なプライマーデザインはPCRの成功に直結します。 これまでのガイドラインの内容をよく検討し実践することでプライマーを最適化し、 効率的に・特異的に・正確に増幅したPCR産物を様々な分子生物学の解析に利用することができます。