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入門編:遺伝子導入に関する説明   |   2023年11月17日

トランスポゾンを使おう

キーワード: Transposable elements, Transposase, PiggyBac

遺伝子デリバリーをするときに、最初にウイルスベクターと非ウイルスベクターのどちらを使うべきかを考えます。ウイルスベクターにはたくさんの選択肢がありますが、非ウイルベクターも見過ごすことはできません。次に考えることは、長期に安定した遺伝子発現と一過性の発現のどちらが必要なのか、です。長期にわたる安定発現は、トランスポゾンやトランスポゼースを持つプラスミドを用いた非ウイルス性ベクターで達成できます。しかしながら、どのような用途にどのトランスポゾンを使用して、条件を最適化するべきか?など多くの疑問が湧いてきます。この場を借りてベクタービルダーがトランスポゾンに関するそれらの疑問に答えていきます。

飛び回るトランスポゾン

1960年代にDNAの転写、翻訳機構が解明される以前から、遺伝因子が植物の染色体内を動き回る様子が観察されていました。この様な転移因子(トランスポゾン)は、後にウイルスから哺乳類に至るまで、あらゆる生物で発見されています。それから数十年、分子生物学の爆発的な発展とともにトランスポゾン研究が進んだ結果、トランスポゾンは宿主細胞のゲノムに遺伝物質を導入するために利用されるようになりました。

自然界でDNAトランスポゾンは末端反復配列(TR)に挟まれたトランスポゼースのコード領域として存在します。このトランスポゼース酵素は、TRとゲノム部位のあいだを切断してトランスポゾン領域全体の転座を可能にします。トランスポゼースの発現によって転座が促進されます。このシステムは、トランスポゾンのTRの間にあるトランスポゼースを任意の遺伝因子に組み換えることで、遺伝子デリバリーツールとして改変することができます(図1)。

Transposons in nature can be separated into components on plasmids for gene delivery.

図1. 野生型トランスポゾンの構成要素は、遺伝子デリバリー用のプラスミドに分離される

DNAトランスポゾンは、レンチウイルスのようなウイルスベクターと比べて重要な利点があります:ウイルスベクターよりも生産コストが低く、技術的難易度も低く、さらに重大な免疫反応のリスクも低くなります。しかし、欠点として、トランスフェクションが難しい細胞種があること、in vivoトランスフェクションが難しいことが挙げられます。

トランスポゾンシステムの選び方

安定発現のために非ウイルスベクターを使うと決めたならば、選択肢はpiggyBac, Sleeping Beauty, Tol2トランスポゾンシステムになります。どれも似たようなシステム構成となっています:

1. GOI(プロモーター、polyAなどを含む発現カセット)を末端反復配列(TR)で挟んだ「トランスポゾンプラスミド」。

2. 対応するトランスポゼース。"ヘルパープラスミド "またはmRNAとして送達することもできるし、トランスポゼースを安定発現している細胞株/動物株を使用することもできます。

注:適合するトランスポゼースとトランスポゾンの組み合わせしか使用できません。piggyBacトランスポゼース(PBase)はSleeping BeautyやTol2トランスポゾンに使用できません。

PiggyBac

遺伝子shRNA組換え抗体などを導入できる、最もポピュラーなトランスポゾンシステムがPiggyBacです。CRISPR/Cas9ゲノム編集のような他の技術と組み合わせることも可能です。piggyBacベクターは、TRの間に最大27kbのDNA搭載できるため高い利便性を持ちます。piggyBacトランスポゼースはTTAA部位で染色体DNAを切断して挿入し、遺伝子コーディング領域へ挿入が起こる傾向があります。

発見以来、piggyBacトランスポゾンとトランスポゼースの両方に改良が加えられてきました。トランスポゾンの不要な部位は除去され、トランスポゼースはコドン最適化と変異導入によって高活性化しています。野生型PBaseトランスポゼースはSleeping BeautyやTol2トランスポゼースよりも高い活性を持ちますが、改良版のhyPBaseは15倍も高い転移活性を達成しています。加えて、より一層改良されたhyPBaseではDNA切断活性は残されているけれどもゲノム挿入活性がなくなっているために、ゲノムに挿入されたトランスポゾンを再転移させず、かつ痕跡を残さずに取り除くことができます。現在、hyPBaseは関連特許があるので、商業用ベクターへの使用には適切なアドバイスを得て行われる必要があることに注意してください。

Sleeping Beauty

Sleeping Beauty(SB)ベクターシステムは挿入部位の高いランダム性とTA配列が切断部位として選ばれることから、CAR-T細胞療法のような臨床の場で人気があります。piggyBacシステムと同様に、SBには高活性型変異体(SB100X)が開発されていますが、ほとんどの細胞タイプにおいてSB100Xの活性はhyPBaseより低くなります。SBベクターシステムは搭載DNAサイズが8kbほどとやや少なめになり、SBトランスポゾンの転移後には“CAG”配列を残します。

すべてのトランスポゾンシステムは使用できる細胞のタイプに大きな制約がありますが、Sleeping Beautyは、活性を維持しながら細胞標的性を高めるために、HSVやアデノウイルスなどのウイルスベクターシステムと組み合わされて使用されています。

Tol2

Tol2トランスポゾンシステムは染色体の非凝縮領域へのバイアスの無い挿入が起こるために、動物株の樹立によく使われます。Tol2ベクターは11kbまでのDNA配列を搭載可能です。トランスポゼース活性はpiggyBacやSBトランスポゼースよりは低い傾向があります。Tol2は魚類モデルで高い活性を示すため、ゼブラフィッシュ系統の作製に用いられています。

下の表は、piggyBac、Sleeping Beauty、Tol2ベクターシステムの主な比較となります。

トランスポゼース 転移活性 ベクター搭載可能DNA長 挿入の傾向 Sequence Bias
PiggyBac PBase, hyPBase, PBx 最高 27 kb 遺伝子配列内 TTAA
Sleeping Beauty SB, SB100X 2-8 kb ランダム TA
Tol2 Tol2 11 kb ランダム No preference

トランスポゾンのトラブルシューティング

他の遺伝子デリバリーと同様に、トランスポゾンシステムのセットアップには慎重な準備と注意深いコントロールが必要になります。多くのコンポーネントから構成されるために、 ネガティブコントロールは特に重要です。例えば、in vitro条件の場合ではトランスポゾンベクターだけをトランスフェクションしたネガティブコントロールを実験と並行してセットアップし、ネガティブコントロールから導入遺伝子の発現がなくなるまで両者の培養を継続する必要があります。これによって導入遺伝子が転移された細胞にのみ残されていることが示唆されます。宿主ゲノム内の導入遺伝子の位置は、ゲノムDNA-トランスポゾン接合部を増幅できるinverse PCRまたはLinker-mediated PCR (LM-PCR) で確認します。

転移効率が低いとき、問題はトランスポゾンベクターかトランスポゼース、あるいはその両方にあるかもしれません。まずはトランスポゾンベクターとトランスポゼースベクターの比率をチェックしてください。PBaseを使用するpiggyBacシステムでは、1:1の比率から始めることをお勧めします。トランスポゼースの濃度を上げると転移効率は上がるかもしれませんが、遺伝子毒性も高くなる可能性があります。むしろ、トランスポゾンベクターの濃度を高めたほうが効率の上昇が期待できます。バクテリアのバックボーン成分を取り除いてよりコンパクトにしたベクターを利用することで、効率を上げることができます。これにより効率が向上するだけでなく、細菌由来のゲノムが挿入されるリスクも回避できます。

トランスポゼースの導入方法も転移効率と安定性に影響をあたえます。トランスポゼース発現プラスミドもしくはmRNAを使用する方法が最もポピュラーな方法です。プラスミドは高い導入効率が期待できますが、トランスポゼースの発現と活性持続が長期化するリスクがあります。トランスポゼースの活性が長期間続くと、トランスポゾンがゲノム内で飛び回ることによって宿主の遺伝子が破壊される可能性があります。トランスポゼースmRNAを利用すると効率は低下するけれども、トランスポゼースが組み込まれる危険性がなく、短期間の発現が保証されます。

最後に

非ウイルスベクターは遺伝子機能の研究や細胞治療などに重要な遺伝子デリバリーツールであり、常に改良され続けています。トランスポゾンとトランスポゼースはさまざまな側面での最適化が続けられているので、自分の研究に最適なオプションが見つかるでしょう。どのベクターシステムを使うか、どのトランスポゼースを使うか、どのインサートを使うか、ベクタービルダーにご相談ください

参考文献

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