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入門編:遺伝子導入に関する説明   |   2024年12月03日

プロモーターが多すぎて選べない:効果的な遺伝子デリバリーに最適なユビキタスプロモーターを選ぶ

キーワード: プロモーター, クローニング, CMV, CAG, レンチウイルス, AAV

遺伝子デリバリー用ベクターのデザインにおいて、適切なプロモーターを選択することは重要です。ベクターにとって理想的なプロモーターは、目的遺伝子(GOI)が標的組織または細胞内で十分なレベルで発現することを保証します(図1)。研究の目標に応じて、どのタイプのプロモーター(恒常的、組織特異的、ユビキタス、誘導性、ウイルス性/非ウイルス性)からGOIを発現させるのかを検討してください。実験に用いる多様な細胞タイプ間で整合性の高い遺伝子発現を得るためには、ユビキタスプロモーターが選択されます。この記事では、一般的に使用されるユビキタスプロモーターの概要と、それらをベクターに組み込んで遺伝子デリバリーを成功させるためのガイダンスを提供します。

Figure1 Promoters

図1. プロモーターとその他のベクターコンポーネントの概要図

一般的な考慮事項

遺伝子発現のためのユビキタスプロモーターの選択は、プロモーター活性、長さ、およ希望するGOI発現レベルという3つ要素のバランスをとることになります。プロモーターの活性は、通常、組織または細胞の種類、およびGOIの発現レベルによって決定されます。CMV、CAG、CBh、EF1αなどの強力なプロモーターは、高レベルの転写活性を持ち、大量のタンパク質産生が必要な場合に使用されます。多様な細胞タイプで安定した中強度の発現が必要で、生理学的なレベルの発現量が必要な場合は、PGK、SV40、MSCV、EFSなどの中強度のプロモーターが好まれます。

プロモーターの長さも考慮するべき重要な点であり、ベクターの搭載可能DNA容量の影響を受けます。GOIが長く、ベクターの搭載可能DNA容量に制限がある場合は、より短い(一般的に弱い活性を持つ傾向がある)プロモーターが使用されます。逆に、GOIが短い場合は、より長く高活性なプロモーターを使用できます。たとえば、搭載可能DNA容量が~4.7 kbに制限されているAAVシステムでは、GOIが長い場合は、容量を調整するために中強度EFSプロモーター(232 bp)の使用をお勧めします。特定の発現系に適したプロモーターの選択は、ベクターの搭載容量、GOIの長さ、および必要な発現レベルとの間の微妙なバランスの上に成立します。

最もポピュラーなユビキタスプロモーターには、ウイルス性と非ウイルス性のものがあります。CMVは、その小さなサイズ(589 bp)と多くの細胞タイプで強力なGOI発現を促進する能力により、最も広く使用されているウイルス性ユビキタスプロモーターの1つです。CMVプロモーターは、特にin vitro研究において、強力な遺伝子発現に非常に効果的ですが、幹細胞などの特定の細胞タイプでは、CMVプロモーターが時間の経過とともにサイレンシングする傾向があることに注意が必要です。EF1αのような広範に発現している遺伝子に由来するプロモーターと同様に、非ウイルス性プロモーターは、長期発現やin vivo条件での遺伝子発現において、より安定で生理的な発現レベルを提供します。EF1αはCMVに比べてサイレンシングしにくいため、プロモーターのサイレンシングの回避が必要な場合やCMVのサイレンシングが予想される場合に使用されます。活性、長さ、配列など、各プロモーターの詳細については、ベクターコンポーネントガイドをご覧ください。

プロモーターの選択は、使用する実験系、用途、および実験パラメーターによって変更する必要があります。適切なユビキタスプロモーターの選択するために、当社の長年にわたる遺伝子デリバリー経験からまとめたヒントをいくつかご紹介します。

(1)ウイルスによる遺伝子デリバリーのためのプロモーター選択:遺伝子デリバリーにウイルスベクターを使用する場合、GOI発現とウイルスパッケージングを成功させるためには、プロモーターの選択を慎重に検討することが重要です。AAVベクターの場合、CMVプロモーターは、さまざまな細胞タイプで強力にGOIを発現するため、in vitro実験では一般的に使用されます。しかし、in vivoではCMVプロモーターの広範なサイレンシングが観察されており、CMVプロモーターが宿主システムによってウイルス要素として認識される可能性があることを示しています。そのため、CAG(1733 bp)、CBh(798 bp)、およびEF1α(1178 bp)などの他の強力なプロモーターが、AAV in vivoでの発現に好まれています。

CAGプロモーターは高いGC含有率の配列のために、レンチウイルスベクターのウイルスパッケージングにおけるウイルスタイターが低くなる可能性があります。そのため、レンチウイルスベクターでは、CAGプロモーターの代わりにCMVやEF1αなどのプロモーターが推奨されます。レンチウイルスベクターの設計に関するもう一つの重要な考慮事項は、同じプロモーターを使用した複数の発現カセットをデザインしないことです。相同な配列を持つプロモーターは、レンチウイルスで相同組換えが発生することで、プロモーター間に位置する遺伝子が欠失することがあります。組換えのリスクを減らすためには、複数の遺伝子発現に異なるプロモーターを使用することや、IRES2Aなどのリンカーを使用してポリシストロンで複数の遺伝子を発現することをお勧めします。

(2)発現ターゲット(GOIと選択マーカー)に対するプロモーターの選択:導入遺伝子と選択マーカーの両方を持つベクターを設計する際には、それぞれに適したプロモーターを選択することが重要です。GOIでは、高レベルの発現が求められることが多いため、CMVやCBhなどの強力なプロモーターが一般的に使用されます。導入遺伝子の発現にはエンハンサー、サイレンサー、その他の調節要素も必要になり、更にすべてがベクターの搭載可能DNA容量内に収まる必要があるため、より小さなプロモーターが理想的です。選択マーカーは、主にトランスフェクション/トランスダクション陽性細胞の同定または選択に使用されるため、通常は中程度の発現で十分です。マーカーは、すべての標的細胞タイプで発現する必要があり、大きなベクターコンストラクトの一部であり、スペースを節約するために、より小さなプロモーターを持つことが推奨されます。発現系にもよりますが、サイズの小さな中強度のユビキタスプロモーターは、広範囲の細胞タイプにわたって安定して中程度の発現を提供するため、マーカー発現に最適です。

(3)毒性遺伝子を発現させるときのプロモーターの選択:強力なプロモーターを使用して遺伝子を発現することは、細胞毒性やその他の有害な生理学的結果につながる可能性があるため、必ずしも有用であるわけではありません。例えば、レンチウイルスベクターでは、Gag遺伝子とPol遺伝子がウイルス粒子の産生に必須ですが、Gagを高レベルで発現させると過剰な粒子形成を引き起こし、細胞資源の枯渇を引き起こしたり、Polの過剰発現がDNAの複製や修復を妨げるなど、ゲノムの不安定性につながる可能性があります。Mycのようながん遺伝子の過剰発現は、制御不能な細胞増殖や細胞ストレスパスウェイ活性化を引き起こし、細胞死の原因となる可能性があります。したがって、毒性遺伝子をクローニングする場合、より弱いプロモーターが好まれます。例えば、マウスFoxn1を駆動する中強度プロモーター(増殖調節遺伝子)を含むレンチウイルスベクターは、強力なプロモーターを用いた場合と比較して、ウイルスパッケージング時に10倍高いタイターを達成することができます。

(4)small non-coding RNA発現用プロモーターの選択:U6やH1などのPol IIIプロモーターは、一般的に遺伝子ノックダウン/ノックアウトベクターシステムにおいて、ガイドRNA(gRNA)またはshRNAの発現に使用されます。Pol IIIプロモーターは、一般的にmRNAの安定性、核外輸送、および翻訳に必要な5'キャップと3'ポリAテールを持たないsmall non-coding RNAの発現に適していますが、タンパク質をコードする遺伝子発現には不適切です。

推奨できない使用 理由
AAVベクターを用いたin vivo環境での遺伝子発現にCMVプロモーターを使用する in vivo 細胞内でサイレンシングが発生する
レンチウイルスベクターでCAGプロモーターを使用する ウイルスパッケージング効率が大きく低下し、得られるタイターが減少する
レンチウイルスベクターに同じプロモーターを2つ搭載する 相同なプロモーターの間で高頻度の組み換えが発生して、配列が欠失する
small non-coding RNAの発現にPol IIプロモーターを使用する 転写が失敗する
ベクターデザインを最適化しないで毒性遺伝子を使用する 宿主細胞、大腸菌、パッケージング細胞の死、およびタイターの低下

まとめ

遺伝子デリバリーを成功させるためには、ベクターデザイン時に適切なプロモーターを選択することが重要です。ベクターシステム、導入遺伝子の種類、必要な発現レベルなど、いくつかの要因に応じて、異なるプロモーターを選択してください。特にAAVまたはレンチウイルスシステムを使用した遺伝子デリバリーでは、適切なプロモーターを使用することで効率、安定性、安全性を向上させることができ、意図しない副作用を避けて実験の成功させることができます。ここで説明してきた考慮するべき点の多くは、ベクターデザインスタジオのさまざまなシステムに組み込まれており、デザインチームはいつでもあなたのお手伝いをします

条件 推奨プロモーター 主な考慮点
AAV CAG, CBh, EF1α 標的細胞内でのサイレンシングを避ける
レンチウイルス CMV, EF1α 高GC含有率と組み換えの発生を避ける
導入遺伝子 CMV, CBh 発現量と発現制御の最適化
マーカー PGK サイズを最優先する
Short non-coding RNA U6 or H1 (Pol III) Pol IIプロモーターを使わない

参考文献

Chen, Yinxing, et al. "A Comprehensive Study of the Effects by Sequence Truncation within Inverted Terminal Repeats (ITRs) on the Productivity, Genome Packaging, and Potency of AAV Vectors." Microorganisms 12.2 (2024): 310.

Arjomandnejad, Motahareh, et al. "Immunogenicity of recombinant adeno-associated virus (AAV) vectors for gene transfer." BioDrugs 37.3 (2023): 311-329.

Qin, Jane Yuxia, et al. "Systematic comparison of constitutive promoters and the doxycycline-inducible promoter." PloS one 5.5 (2010): e10611.

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Bai, Xingjian, et al. "Prevalence of errors in lab-made plasmids across the globe." bioRxiv (2024): 2024-06.

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