計測したウイルスタイターがベクタービルダーから提供された数値とちがう

個々人によって検定されたウイルス力価の不一致はたいていの場合、検定方法の違いやウイルスの分解によるばらつきから起こります。ベクタービルダーはそれぞれのウイルスタイプに対して異なるウイルス力価検定方法を採用しています。当社がどのように検定方法を選択しているのかについての詳しい情報はベクターFAQの“ベクタービルダー社におけるウイルスタイターの計測法は?”の項を参照してください。

もし研究室での検定によって得られたウイルス力価がベクタービルダーの提供する値と大きなずれがある場合は、検定方法の違いによるものかもしれませんたとえば、ベクタービルダーはポピュラーなp24タンパク質へのELISA法をレンチウイルスの力価決定に使用していますが、別のラボは費用の安いqPCR法を使ってレンチウイルスのRNAゲノムを定量します。ほかのラボはもっと直接的にFACSやコロニー形成効率の定量を使います。それぞれの方法は利点と欠点がありますが、各方法を使って測定されたレンチウイルスのウイルス力価は大きく異なることがあります。

同じような検定方法を使っていても、実験モデルや試薬の違いや研究機器の検出感度の問題などのために結果にばらつきが生じることがあります。(いくつかの細胞タイプに毒性を持つ)ポリブレンをレンチウイルスの感染につかったり、感染しにくい細胞や動物種を使ってウイルス力価を測定するなどの例もあります。試薬や検出機器(顕微鏡など)の感度がウイルスの挿入を検出できるほど高くないときには、得られるウイルス力価は過小に評価されたものなります。ウイルス力価測定方法の少しの違いが測定結果に大きな影響を与えることがあります。例えば、AAVウイルス力価はストック内のウイルスゲノムのコピー数の定量にqPCR法を使います。qPCRのプライマーの標的配列の選択はAAVウイルス力価の正確な測定に非常に重要です。当社のAAVウイルス力価測定では、qPCRプライマーはもっともよく利用されるAAVのITRを標的としています。ITR特異的なプライマーを使用したウイルス力価は別の部分を標的にしたプライマーを使用して測定したウイルス力価から差異が生じます。なぜならばウイルスITRはその2次構造のためにその他の部分との増幅キネティクスが異なっているためです。同様に、プライマーのアニーリング条件(アニーリング温度や効率)もAAV ウイルス力価測定に影響を与えます。

測定方法の違いだけでなく、ウイルスストックの保存、取り扱い方法に対する感度も測定結果のズレの原因となります。エンベロープに包まれたウイルスは‐80℃以上で保存されたり、くり返し凍結‐解凍されると急速に感染能力を失います。核酸にダメージを与えるバッファーの含有物やタンパク質の構造に影響を及ぼす物質が混入しているとウイルスの感染能力を減少させます。加えて、ウイルスの純度も安定性に影響を与えます。AAVやアデノウイルスはレンチウイルスと比べて非常に安定していますが、純度の低いAAVやアデノウイルスはプロテアーゼによって分解されやすく、冷凍‐解凍を繰り返すとウイルス力価が低くなることがあります。

実験でウイルスベクターの使用を計画するときには、ベクターがどのように任意の実験条件下で働くのかを知っておくために、実験モデルを最適化するためのテストをすることをお勧めします。

 

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