ポリシストロニック発現にIRESか2A(2Aタイプ)のどちらを使うべき?

ひとつのプロモーターから複数のORFを共発現するベクターを設計するときには、配列内リボソーム侵入部位(IRES)もしくは2Aペプチドのようなリンカーを使って複数のORFを連結して、プロモーター下に配置する必要があります。どちらのリンカーをつかっても単一のmRNAから複数のタンパク質が発現します。

メカニズム

脳心筋炎ウイルス(EMCV)由来のIRESが最も幅広く使われており、ベクタービルダーも採用しています。EMCV由来のIRESはリボソーム結合サイトになってmRNAの内部配列からの翻訳開始点として機能します。

2Aペプチドはウイルス由来の短い(~18‐25aa)アミノ酸配列で、”自己切断型“ペプチドと呼ばれ、同一の転写産物から複数のタンパク質を作り出すことができます。2Aペプチドは本当の意味で”自己切断型“ではありません。2AペプチドのC末端でのグリシンープロリン生成をスキップすることで2Aペプチド配列と下流のタンパク質の間での分離を引き起こします。その結果、上流のタンパク質のC末端には2Aペプチドが付加され、下流のタンパク質のN末端側にはプロリンが付加されます。よく使われる2Aペプチドには異なるウイルス由来のP2A、T2A、E2A、F2Aなどがあります。

IRSと2Aの長所と短所

IRESが2Aより優れている点は、上流・下流を問わずORFの配列に変異を導入しないことです。

IRESの欠点はポリシストロンの下流のORFの発現量は上流のものよりも著しく減少(10‐20%)します。蛍光タンパク質をIRESの下流で発現させる場合、特に細胞あたりの導入遺伝子数が限られるin vivo実験では検出可能なシグナルを得ることが難しくなります。またIRESのサイズは500bp以上あるので、ベクター構築及びウイルス作製が困難になります。

2AがIRESより優れている点は下流のORFの発現レベルが上流ORFと比べてもほぼ同じ(もしくはやや少ない程度)です。

2Aの欠点として、ORFにペプチドが付加されることで予期しない影響が起こる可能性があります。そして、2Aの自己切断の活性は100%ではなく、上流/下流のORFによって影響を受けます。そのため、ポリシストロンからの翻訳産物の一部が自己切断に失敗した融合タンパク質になることがあり、実験によっては問題が生じる可能性があります。

もしバイシストロンの2つ目のORFが薬剤選択マーカー等であり、高発現を必要としない場合はIRESが有効な選択となります。もしポリシストロンに2つ以上のORFがある場合、もしくは各ORFの発現量が同じくらいである必要があるならば、2Aペプチドを使うことをお勧めします。

2Aペプチドタイプの比較

4種の2Aペプチド(P2A、T2A、E2A、F2A)のうち、P2Aは最も高い自己切断効率(いくつかのケースでは100%近い)を持ちます。T2Aはその次に高効率で、E2AとF2Aが続きます。F2Aの効率は50%程度になります。ほとんどの場合はP2AかT2Aをお勧めしています。

参考文献 表題
Biotechniques. 41:283 (2006) Translational efficiency of EMCV IRES in bicistronic vectors
PLoS One. 6:e18556 (2011) Cleavage efficiency of 2A linkers in human cell lines, zebrafish and mice

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