組み換えタンパク質の発現と精製

VectorBuilderは、タンパク質構造分析、酵素アッセイ開発、創薬、診断、バイオエンジニアリングなどの幅広いアプリケーションに適した複数のタンパク質発現プラットフォームを使って、カスタマイズされた組換えタンパク質生産サービスを提供します。当社のタンパク質生産プロセスは、高品質の組み換えタンパク質を生成するために最適化され、当社のベクター構築サービスでも提供されている独自の組み換えタンパク質用発現ベクターを用いています。また、ユーザーご提供のベクターを使った、組み換えタンパク質の受注生産にもご対応しています。

以下の発現プラットフォームに基づいた組換えタンパク質生産を提供します:
  • バクテリア
  • 酵母
  • 哺乳類細胞
  • 昆虫細胞

サービスの詳細

特徴
  • 様々な研究目標に適した発現プラットフォームを揃え、柔軟な選択制を備えた包括的なタンパク質生産サービス。
  • 酵素、サイトカイン、受容体、抗体など、さまざまなタンパク質発現の最適化経験と、生産ラインの豊富な経験。 
  • ベクター構築からタンパク質精製まで、タンパク質の生産ワークフロー全体をカバーしたワンストップソリューション。
  • 特定のプロジェクトのニーズを満たすために、オプションとして精製法の追加や検出用タグが追加できます。
  • クロマトグラフィーやろ過ベースの技術を含む、高純度を確保するための精製オプションに対応。
  • リクエストに応じて、精製後のサービス(脱塩、カスタム分注、エンドトキシン除去、無菌処理(aseptic process)、凍結乾燥など)を利用できます。
価格と作業日数

各組み換えタンパク質発現システムで利用可能なサービスの価格と作業日数を以下の表1に示します。

表 1. 組み換えタンパク質生産の価格と作業日数

発現系 提供している受託サービス 納品物 標準的な収量 価格(税別・送料別) 作業日数
バクテリア (大腸菌)* パイロットスタディ
  • パイロット発現レポートとゲルブロット画像
  • 未精製抽出物 (オプション)
>1 mg,
85% purity
39,000円より 1-2 週
タンパク質発現の最適化 (オプション)
  • 最適化データとプロトコール
65,000円より 4-6 週
タンパク質発現のスケールアップと精製 (20 Lまで)
  • 精製タンパク質**
  • タンパク質発現レポート
97,500円より 2-3 週
酵母 (S. cerevisiae) パイロットスタディ
  • パイロット発現レポートとゲルブロット画像
  • 未精製抽出物 (オプション)
>1 mg,
85% purity
58,500円より 1-2 週
タンパク質発現の最適化 (オプション)
  • 最適化データとプロトコール
78,000円より 4-6 週
タンパク質発現のスケールアップと精製 (20 Lまで)
  • 精製タンパク質**
  • タンパク質発現レポート
117,000円より 2-3 週
哺乳類細胞 (293T) パイロットスタディ
  • パイロット発現レポートとゲルブロット画像
  • 未精製抽出物 (オプション)
1-100 mg/L, 85% purity 104,000円より 3-4 週
タンパク質発現の最適化 (オプション)
  • 最適化データとプロトコール
195,000円より 3-4 週
タンパク質発現のスケールアップと精製 (1 Lまで) 
  • 精製タンパク質**
  • タンパク質発現レポート
お問合せ お問合せ
昆虫細胞 (Sf9) パイロットスタディ
  • パイロット発現レポートとゲルブロット画像
  • 未精製抽出物 (オプション)
1-150 mg/L, 85% purity 104,000円より 6-7 週
タンパク質発現の最適化 (オプション)
  • 最適化データとプロトコール
221,000円より 6-7 週
タンパク質発現のスケールアップと精製 (1 Lまで) 
  • 精製タンパク質**
  • タンパク質発現レポート
お問合せ お問合せ

*バクテリア発現系で、組み換えタンパク質が封入体(インクルージョンボディー)として発現される場合、タンパク質の回収に、料金と作業日数が追加される場合があります。

**精製タンパク質は、デフォルトで50%グリセロールを含むPBS(pH 7.4)で納品されます。これは、-80°Cでのタンパク質の長期保存に適したバッファーです。ご要望に応じて、特定のタンパク質または特定の研究に必要なカスタム保存バッファーの納品も可能です・。

上表1のサービスに加えて、表 2の精製後サービスを提供します。

表 2. 追加サービスの価格と作業日数

ご提供しているサービス 価格(税別・送料別) 作業日数
ウエスタンブロット* 19,500円/run 2-4 日
エンドトキシン値測定と除去 (< 1.0 EU/mg) 19,500円/sample 5-7 日
精製用タグの除去 (例: His, MBP, GST) 19,500円/sample 5-7 日

* ウエスタンブロットの検出用抗体は、弊社リストにある融合タグの場合、当社が御用ししています。提供されます。カスタム融合タグの場合や、目的タンパク質検出用の抗体は当社ではご用意していません。ユーザー側で弊社にaliquotをご送付いただく場合があります。

ユーザーご提供のプラスミドDNAからのタンパク質発現と精製

ユーザー側で発現用プラスミドDNAを弊社にご送付いただく場合は、 "サポート" > "マテリアルサブミッションフォーム"から、オンラインマテリアルの情報をご提出ください。マテリアル到着遅延や輸送中のサンプルのダメージを避けるために、発送ガイドラインに従ってください。全てのユーザー提供マテリアルは、当社製造拠点でお受け取り後、必須としてる品質検査を実施しています。品質検査は、ご提供いただくサンプルと試用目的によって、1サンプルごとに、15,000円よりの追加QC費用が発生する場合があります。また、ご提供いただいたマテリアルが、QCチェックに合格するまで受託作業は開始されないことをあらかじめご了承ください。

技術関連情報

バクテリア

大腸菌は、ダブリングタイムが短く、取り扱い技術的がシンプルで、応用も効き、製造コストも低いなどの利点があるため、組み換えタンパク質生産に最もよく使用されている宿主です。 VectorBuilderは、細胞質、ペリプラズム、および可溶性および不溶性タンパク質発現のためにワークフォローを高度に最適化し、大腸菌での組み換えタンパク質の生産を受託しています。ご依頼に応じて、枯草菌での組み換えタンパク質発現系の構築とタンパク質精製を受託しています。

当社の標準的なタンパク質生産プロセスは、融合系の選択、精製タグの選択、およびコドンの最適化を含むコンストラクトのデザインから始まります。デザインが決定すると、必要であれば発現遺伝子の新規合成を行い、発現ベクターバックボーンへのクローニングを行います。完成した発現ベクターは、至適宿主バクテリアに形質転換し、小バッチで培養を行い、タンパク質発現を検証します。検証結果に基づいて、大規模なバッチ培養を行い、タンパク質の精製を行います。

Typical_workflow_of_recombinant_protein_production_in_E._coli

表 1. 大腸菌発現系を用いた標準的な組み換えタンパク質生産ワークフロー

酵母

酵母を組み換えタンパク質発現宿主として用いる利点は、他の真核生物タンパク質発現系に比べて、生産コストを低く抑えながら、真核生物タンパク質の機能発揮に不可欠な翻訳後修飾を施して生成することがでるからです(例えば、治療用タンパク質のグリコシル化は、免疫応答を誘発するリスクを減らすことができます)。 酵母発現系の他の利点は、タンパク質発現が早く、培養スケールを大きくすることが容易で、技術的にシンプルであることです。 VectorBuilderは、分泌タンパク質および細胞内タンパク質発現用のワークフォローを最適化し、S.cerevisiaeでの組み換えタンパク質の生産を受託しています。さらに、ご依頼に応じて、P.pastoris系での組み換えタンパク質発現と精製の受託も可能です。

当社の標準的なタンパク質生産プロセスは、融合系の選択、精製タグの選択、およびコドンの最適化を含むコンストラクトのデザインから始まります。デザインが決定すると、必要であれば発現遺伝子の新規合成を行い、酵母組み換えタンパク質発現ベクターにクローニングを行います。ベクターを適切な酵母株にエレクトロポレーションし、遺伝的に安定したクローンをスクリーニングして、高生産酵母株を特定します。次に、小バッチで発酵を行い、タンパク質発現を検証します。検証結果に基づいて、大規模なバッチ発酵を行い、タンパク質の精製を行います。

Typical_workflow_of_recombinant_protein_production_in_yeast.jpg

表 2. 酵母発現系を用いた標準的な組み換えタンパク質生産ワークフロー

哺乳類細胞

哺乳類細胞を用いた組み換えタンパク質発現系は、発現タンパク質が翻訳後修飾を受け、適切なフォールディングをとり、最も自然な状態で生産されます。そのため治療用タンパク質、ワクチン、および抗体を生成するために最適なアプローチです。VectorBuilderは、分泌タンパク質および膜タンパク質の発現ワークフローを最適化し、一過性トランスフェクションによるHEK293T細胞での組み換えタンパク質生産を受託しています。ご依頼に応じて、CHO細胞系での組み換えタンパク質発現と精製も受託いたします。

当社の標準的なタンパク質生産プロセスは、融合系の選択、精製タグの選択、およびコドンの最適化を含むコンストラクトのデザインから始まります。デザインが決定すると、必要であれば発現遺伝子の新規合成を行い、哺乳類細胞用の組み換えタンパク質発現ベクターにクローニングを行い、HEK293T細胞にトランスフェクションを行います。タンパク質発現の検証のために、まず小バッチで培養を行い発現タンパク質を検証します。検証結果に基づいて、大規模なバッチ培養を行い、タンパク質の精製を行います。

Typical_workflow_of_recombinant_protein_production_in_mammalian_cells.jpg

図 3. 哺乳類細胞発現系を用いた標準的な組み換えタンパク質生産ワークフロー

昆虫細胞

組み換えバキュロウイルスを作成し、それを昆虫細胞に感染させることで目的遺伝子を高密度昆虫細胞培養系で発現させて得られた組み換えタンパク質は、真核生物の翻訳後修飾およびタンパク質フォールディングなどの機能性の発揮に重要な修飾を維持しているために、広く使用されているアプローチです。昆虫細胞発現系は、キナーゼとステロイド受容体の組み換えタンパク質の生成に適したアプローチでです。なぜなら、昆虫細胞系ではリン酸化が行われない、またはタンパク質が誤って折りたたまれているために、不活性型として生成できます。VectorBuilderは、分泌タンパク質、膜タンパク質、細胞内タンパク質用にワークフローを最適化し、Sf9昆虫細胞での組み換えタンパク質発現系を受託しています。

当社の標準的なタンパク質生産プロセスは、融合系の選択、精製タグの選択、およびコドンの最適化を含むコンストラクトのデザインから始まります。デザインが決定すると、必要であれば発現遺伝子の新規合成を行い、バキュロウイルスのトランスファーベクターのクローニングを経て、組み換えバクミドを構築します。 組み換えバクミドは昆虫細胞にトランスフェクションされ、組み換えバキュロウイルスを産生、増幅します。タンパク質発現の検証のために、まず小バッチで培養を行い発現タンパク質を検証します。検証結果に基づいて、大規模なバッチ培養を行い、タンパク質の精製を行います。

Typical_workflow_of_recombinant_protein_production_in_insect_cells.jpg

図 4. 昆虫細胞発現系を用いた標準的な組み換えタンパク質生産ワークフロー

品質検査

VectorBuilderが製造したタンパク質は、デザインされた正確なシーケンスから成り立ち、不純物のコンタミネーションがなく、目的のプロジェクトに対した仕様を満たすことを保証するように、厳格な品質管理を行っています。標準的な品質検査は、SEC-MALS(サイズ排除クロマトグラフィーとマルチアングル光散乱の組み合わせ)によるタンパク質の分子量とサイズの検証、およびSDS-PAGEによるタンパク質純度の検証が含まれます。ご要望に応じてウエスタンブロットで、発現タンパク質の特異性の検証もお受けしています。も可能です。 

Q&A

各組み換えタンパク質発現系の長所と短所は?

どの組み換えタンパク質発現システムにも長所と短所があり、計画しているプロジェクトに適した最適な発現系をまず検討します。下表に、各発現系の長所と短所をまとめています。

組み換えタンパク質発現系 長所 短所
バクテリア
  • コストパフォーマンスがよい
  • 短期間に作成できる
  • 技術がシンプル
  • スケールアップが簡単
  • タンパク質収量が高い
  • 組み換えタンパク質には転写後翻訳が欠失する。
  • 至適コドンが原核生物のバクテリアと目的の真核生物で異なる。
  • 可溶性の問題で特定のタンパク質の発現が大変難しい。
  • インクルージョンボディーに発現タンパク質が封入されることが多く、後のタンパク質精製に苦労する。
  • タンパク質の中には、宿主バクテリアに対して毒性を発揮し、バクテリア増殖を抑制してしまう。
酵母
  • コストパフォーマンスがよい
  • 短期間に作成できる
  • 技術がシンプル
  • スケールアップが簡単
  • タンパク質収量が高い
  • N-グリコシル化、リン酸化などの翻訳後修飾が起こる。
  • 分泌性タンパク質や、細胞内タンパク質の発現に向いている。
  • タンパク質の高グリコシル化
  • グリコシル化のパターンは高等真核生物ののパターンと異なる。
  • N型糖鎖構造に大量のマンノースが存在する。
哺乳類細胞
  • 必要なすべての翻訳後修飾と適切なフォールディングを備えた最も自然な状態のタンパク質を生成する
  • 分泌性タンパク質や膜タンパク質に向いている
  • 治療用タンパク質の製造に最適
  • 生成コストが高い
  • 長い生成期間
  • 細胞増殖の条件設定が複雑
  • スケールアップが難しい場合がある。
  • 収量が低いため、細胞内タンパク質の生成には向いていない。
昆虫細胞
  • 複雑な翻訳後修飾とタンパク質フォールディングの大部分を模倣する。
  • 分泌タンパク質、細胞内タンパク質、膜タンパク質に適しています。
  • 大きなタンパク質複合体の生成に使用できる。
  • 他の真核生物の発現系に比較して高レベルのタンパク質発現が得られる。
  • 高密度の浮遊培養で生産され、非常にスケールの拡張性に優れている。
  • 生成コストが高い
  • 長い生成期間
  • 細胞増殖の条件設定が複雑
  • 技術的な困難さが高い
なぜ大腸菌発現システム系を使って組み換えタンパク質が発現しないんでしょうか?

以下の解説は、大腸菌発現系を用いて組み換えタンパク質が発現しなかった場合に考えられる原因です。

発現ベクタープラスミドと宿主大腸菌株の不一致

プラスミドが、発現誘導用の宿主大腸菌株が使われていない可能性があります。 VectorBuilderの殆どのベクターは、クローニングホスト株 VB UltraStable™ (ベクタークローニングホストとしてベクター情報に記載されています)。 VB UltraStable™は、宿主大腸菌株でのプラスミドを安定して保持する能力があるため通常の、ベクタークローニング用のホストには最適ですが、組み換えタンパク質の発現には使えません。たとえば、pETベクターシステムの場合、IPTGを大腸菌液体培養培地に添加することで、組み換えタンパク質の発現を誘導します。このベクター系は、VB UltraStable™には存在しない、T7RNAポリメラーゼを必要としています。そのため、バクテリア発現系のベクターは通常、発現誘導のために、BL21(DE3)などの適切な発現用宿主を形質転換しなおす必要があります。DE3にはT7RNAポリメラーゼ遺伝子が乗っています。

発現させるタンパク質がホストにとって “問題あり”の場合がある

発現しているタンパク質が不溶性でる、誤ってフォールディングされている、不適切に切断されている、またはバクテリア宿主に対して毒性がある場合など、組み換えタンパク質の発現誘導が不十分になることがあります。この場合、誘導システムを最適化するか(以下を参照)、より耐性のある宿主株または代替発現系の使用を検討する必要があります。

タンパク質を発現させる条件が最適化されていない

発現する遺伝子、発現ベクター、宿主株によっては、発現誘導条件を最適化が必要です。例えば、OD600値(通常は0.6〜0.8)、IPTGやL-アラビノースなどの誘導剤の濃度、誘導をかける時間などです。特に「問題のある」タンパク質を扱う場合は、発現誘導の際の培養温度を最適化してみると有効な場合もあります(上記を参照)この場合、複数の培養温度(16°C、25°C、30°C、37°C​​など)をテストして最適のインダクション温度を検討します。まれに、原因が不明ですが、同じ発現ベクターの異なるクローンが異なる誘導効率を示す場合があります。そおため、複数の単一コロニーを選択し、最適な誘導性能を持つクローンを選択する必要もあります。

上記の問題にぶつかって貴重な時間を無駄にすることはよくあります。また、これらのトラブルシューティングは、長年多くの研究者の経験が蓄積され研究社会の共通知識となっていますので、体験する必要もないでしょう。発現タンパク質を使った最終目的の研究に貴重な時間を使うべきです。最も効果的なトラブルシューティングは、組み換えタンパク質の発現と精製をVectorBuilderにアウトソーシングすることだと思いませんか?