ファージディスプレイライブラリー構築サービス
ファージディスプレイは、繊維状ファージの表面にペプチド、タンパク質、抗体などを提示する強力な技術で、大規模ライブラリーから標的特異的な結合分子のハイスループットスクリーニングを可能にします。VectorBuilderでは、小規模なペプチドライブラリーや抗体ディスプレイライブラリーなど、高品質なファージディスプレイライブラリーの構築に豊富な経験があり、創薬、ワクチン開発、タンパク質間相互作用の研究を強力にサポートします。
特長

ペプチド、 VHH、Fab、scFvディスプレイライブラリー等の多様なファージディスプレイライブラリーを構築可能

次世代シーケンス(NGS)検証済みの高い複雑性(109-1010)および高い均一性を持つライブラリー

高タイター(>1013 PFU/ml)のファージライブラリー

独自のハイスループット親和性測定技術を活用した抗体スクリーニングサービスとの連携も可能
サービス詳細
価格と作業日数 プライスマッチ
サービス | 概要 | 価格 (税別、送料別) | 作業日数 |
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ライブラリーデザイン | 弊社のサービスはコンサルテーションから始まります。経験豊富なエキスパートが、お客様のニーズに最適なライブラリー設計をサポートいたします。目的ペプチド、タンパク質、または抗体に合わせたライブラリーデザインをご提案いたします。 | 無料 | 1-3 日 |
配列バリアントの準備 | 配列バリアントは、配列の新規合成、未免疫動物または免疫された動物から取得できます。 | お問い合わせください | |
ファージライブラリー構築 |
配列バリアントを目的のバックボーン(ファージベクターまたはファージミドベクター)に大規模並列クローニングします。プラスミドライブラリーの品質は、サンガーシーケンスにより事前評価されます。 ファージアセンブリ(ヘルパーファージの有無にかかわらず)と効率的な増幅を経て、高タイター(>1013 PFU/ml)のファージライブラリーをドライアイス梱包でお客様へ納品、もしくは弊社内でスクリーニングを実行することも可能です。 |
お問い合わせください | 3-5 週* |
NGS検証 | 構築したライブラリーのNGS(次世代シーケンシング)検証にも対応しており、ライブラリーの複雑性や均一性を詳細に評価できます。 | お問い合わせください | 1-3 週 |
ライブラリースクリーニング | アルパカ由来のライブラリーを用いた配列誘導型スクリーニングによるVHH抗体スクリーニング、さらにその後の抗体特性評価・最適化サービスも提供しています。 | お問い合わせください |
※上記の納期情報は、109クローンの複雑性をもつライブラリー構築のケースです。超高複雑性(例:1010)ライブラリー構築には、さらに1~2週間の追加期間が必要です。
技術情報
VectorBuilderでは、ペプチドディスプレイライブラリーと、抗体ディスプレイライブラリー(例:VHH、Fab、scFv)の両方の構築が可能です。これら2種類のライブラリーは、分子のサイズや複雑性、使用するベクターのバックボーン、ファージのアセンブリ方法などに違いがあります。
変異体の由来
変異バリアント配列は、新規合成することも、未免疫動物あるいは免疫動物から取得することも可能です。以下の表に、各方法の主な特長をまとめています。
ライブラリーの種類 | 説明 | 主要な機能 | メリット |
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Naiveライブラリー | 未免疫かつ健康な動物からB細胞を分離した抗体cDNAを特異的にPCR増幅。 |
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免疫ライブラリー | 特定抗原に対して免疫された動物からB細胞を分離し、抗体cDNAを特異的にPCR増幅。 |
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合成ライブラリー | 完全に新規デザイン/合成された配列や、縮重ヌクレオチドを含む配列で構成される。 |
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ライブラリーバックボーン
上記2種のファージディスプレイライブラリーの重要な違いは、使用するベクターバックボーンの選択にあります。
ペプチドディスプレイ用M13ファージベクター
M13KEファージベクターなどのバクテリオファージ由来ベクターは、50アミノ酸程度までの短いペプチドのディスプレイに一般的に用いられます。M13ファージDNAは一本鎖DNAで構成されており、全ゲノムを含んでいます。全遺伝子の約半分は外被タンパク質(G3P、G6P、G7P、G8P、G9P)をコードし、残りはゲノム複製、ファージのアセンブリ、および放出に関与する遺伝子です(図1A)。

図1. (A) M13KEベクターマップ (B)短いペプチドを提示する組換えファージ
目的ペプチドはG3P外被タンパク質と融合したハイブリッド融合タンパク質として、ファージ表面に提示されます。ファージの表面に提示されたペプチドは、結合アッセイすることで高親和性バインダーのスクリーニングに利用されます(図1B)。このベクターは大腸菌(E. coli)に導入され、組換えファージ粒子のアセンブリと増幅によって、高タイターのファージライブラリーが得られます。ファージベクターにはファージ全体のゲノムが含まれているため、ヘルパーファージを用いずに完全なファージ粒子の形成が可能です。
抗体ディスプレイ用ファージミドベクター
pComb3xのようなファージミドベクターは、抗体ディスプレイライブラリーによく使用されます(図2A)。pComb3xファージミドには、G3Pなどのファージ外被タンパク質の遺伝子が含まれており、これに外来のDNA配列(例:抗体断片や全長抗体)を融合させることで、抗体をファージ表面にディスプレイすることが可能になります(図2B)。ただし、ファージミドはファージのアセンブリや複製に必要な構造・複製関連遺伝子を欠いているため、自力でファージ粒子を形成することはできません。このため、欠損しているファージ遺伝子を補うために、ヘルパーファージを併用する必要があります。これにより、組換えファージ粒子の形成と放出が可能になります。

図2. (A) pComb3xファージミドベクターの構造図 (B) 表面に抗体を表示する組換えファージ
注文方法
ユーザー様提供の試料を使用する場合
ユーザー様からの試料をご提供いただく場合は、必ずマテリアルサブミッションガイドラインに従って準備・発送をお願いします。ガイドラインを遵守いただけない場合、試料の遅延や破損の原因となることがありますのでご注意ください。ご提供いただいたすべての試料は、VectorBuilderによるQC(品質管理)を受ける必要があり、各アイテムごとにQC費用が発生することがあります。また、提供試料がQCに合格するまで製造プロセスを開始することはできません。ユーザー様より構築済みのプラスミドライブラリーをご提供いただいた場合、その複雑性や均一性については当社では保証いたしかねます。
リソース
FAQ
短鎖ペプチドディスプレイライブラリーはM13KEベクターを使用して構築されており、ファージゲノム全体が含まれています。そのため、各ファージ粒子上に存在するすべてのG3P(外被タンパク質)に、単一もしくは複数のペプチドが融合されることになります。これがファージシステムの構造的・機能的な制約となります。当社では、25アミノ酸以下のペプチドディスプレイを推奨しています。50アミノ酸を超えるペプチドやタンパク質は、融合タンパク質のサイズが大きくなり、ファージの大腸菌感染能に悪影響を及ぼす可能性があり、結果としてファージライブラリーの増殖やスクリーニング効率が低下する恐れがあります。
短鎖ペプチドは合成や発現が容易であるため、ライブラリー作製の複雑さを軽減できます。さらに、短鎖ペプチドは安定性や機能性を維持しながら特異性を改変することができるため、高親和性結合アッセイや創薬開発に適しています。これらの特性により、リガンド探索、受容体研究、治療標的の検証など、多様な用途において非常に効果的なツールとなります。