VHH抗体スクリーニング(ファージディスプレイ)
VectorBuilderは、ライブラリー構築やスクリーニングの専門技術に基づき、ファージディスプレイをベースとしたVHH抗体 (別名:nanobody®) スクリーニングへの包括的なソリューションを提供いたします。アルパカを直接扱うことができる当社の強力な配列誘導スクリーニング技術を活用することで、詳細な特性解析のために、卓越した治療ポテンシャルを持つVHH抗体を同定することができます。
特長

可溶性タンパク質や短鎖ペプチドなどを含む幅広いフォーマットの抗原

優れた特異性と結合親和性をもつ、アルパカの生体内で成熟したVHH抗体

ハイスループットな親和性測定を可能とする、多様なファージのパニング方法や独自のスクリーニング技術

包括的な抗体特性評価および機能検証アッセイが利用可能
サービスの詳細と技術的情報
ファージディスプレイによる抗体スクリーニングは近年一般的になりつつあります。従来のハイブリドーマを使うスクリーニングと比べ、ハイスループットであり、様々な抗体フォーマットのスクリーニングに柔軟に対応できるなど、大きな利点があります。ファージディスプレイライブラリーは、一つのライブラリーに含まれる何百万もの抗体候補を一回のランで同時にテストできるため、非常に効率的なスクリーニングプラットフォームとなります。ファージディスプレイを用いた抗体スクリーニングの典型的なワークフローを以下に示します。






抗原精製
免疫
ファージディスプレイ
ライブラリー構築
ライブラリー構築
ライブラリー
スクリーニングと
抗体探索
スクリーニングと
抗体探索
抗体の特性評価
抗体の最適化と
エンジニアリング
エンジニアリング
- 抗原フォーマット: 可溶性タンパク質、短鎖ペプチド、DNA、mRNA、 細胞、AAV、またはウイルス様粒子 (VLPs)
- アルパカの免疫
免疫の確立とその後の候補同定を成功させるためには、適切な免疫動物と抗原フォーマットを選択することが重要です。アルパカ、リャマ、ラクダなどのラクダ科動物は、2本の重鎖のみからなる重鎖抗体を天然に保有しているため、nanobody探索の理想的なモデル動物とされています。VHH と名付けられたその可変領域は、高度に特異的な抗原結合を可能にします。VHHは、サイズはとても小さいですがCDR3領域が長いため、抗原認識が優れ、安定性や組織浸透性が高く、エンジニアリングがしやすいなど、従来の抗体と比べて様々な利点があります。当社は、アルパカを直接用いることで、免疫によりナイーブB細胞のレパートリーを拡大することができます。
VectorBuilderでは、免疫用に複数の抗原フォーマットを提供しており、調製した抗原はすべて厳格なQCを実施しています。また、抗原はお客様が調製したものをご提供いただくことも可能です。入手が容易で投与量をコントロールできるため、一般的に可溶性タンパク質が免疫抗原として好まれます。しかし、標的抗原が膜結合タンパク質の場合や免疫原性が低い場合には適さないことがあります。このような場合には、細胞、DNA、mRNA、VLP、ウイルスベースの免疫など、他の抗原フォーマットによる免疫方法を検討する必要があります。
- 完全合成またはアルパカから抽出したネイティブ抗体配列
- NGSを用いたライブラリー評価も可能

ファージディスプレイライブラリーの構築には、新規合成配列ならびにナイーブ動物や免疫動物の抗体配列が利用できます。合成ライブラリーやナイーブライブラリーはより広い多様性をもつ抗体配列が得られる一方、免疫動物から作製するライブラリーはより抗原親和性の高い抗体配列を得ることができます。抗体配列の回収後は、ファージミドを用いたベクタークローニング、大腸菌の形質転換とライブラリーアセンブリを行います。構築されたライブラリーでは、組換えファージのそれぞれがカプシド表面にモノクローナル抗体を提示します。また当社では、ファージディスプレイライブラリーの均一性と全体的な品質をNGSを用いて検証しています。
- 機能性を持つファージクローンを濃縮するための多様なパニング戦略
- 独自の配列指向型超ハイスループットスクリーニングRecommend

VectorBuilderは効率を大幅に向上させたハイスループット方法として、独自の配列指向型スクリーニング法(sequence-guided screening)を開発し、個々の抗体親和性スコアをバイアスなしに測定できます。3-5回の濃縮サイクルを経た後、ランキング上位のファージの親和性をELISAやフローサイトメトリーで検証します。
スクリーニングで同定された有望な抗体候補については発現と精製を行い、包括的な特性評価を行います。当社の特性評価サービスには以下のものがあります:
- 抗原認識の特異性の検証
- BLI (bio-layer interferometry)を用いた親和性(アフィニティー)測定と順位付け
- 抗体配列の決定
- エピトープビニング
- 交差反応性評価
- in vitro機能解析
ファージディスプレイで得られたアルパカ由来のVHH抗体は、治療応用のためには一般的には最適化が必要となります。VectorBuilderでは以下の抗体最適化サービスをご提供しています:
- 抗体のヒト化
- アフィニティーマチュレーション
- 初期段階の開発性評価
さらに、急速に進化する抗体医薬市場の需要に応えるため、各種抗体エンジニアリングサービスも提供しています:
- Fc領域エンジニアリング
- 二重特異性エンジニアリング
- バイオコンジュゲーション(抗体結合LNPなど)
- CAR (Chimeric Antigen Receptor) エンジニアリング
- 安定発現細胞株作製
実験による検証
免疫

図 1. アルパカはAAV免疫に対して強い免疫応答を示す。複数のセロタイプ(1、2、4、5、8、9)を混合したAAVを複数回アルパカに免疫し、各免疫後に血清を採取し、ELISAによって力価を測定した。2回の免疫後と比較して、3回および4回の免疫後は血清中の抗体価が有意に増加した。NS:negative serum (非免疫血清)
ファージディスプレイライブラリースクリーニング

図 2. VectorBuilderの配列指向型スクリーニングによる目的適合性の高い5種類の抗体の同定。 (A) 各ファージクローンに対してバイアスのない親和性スコアが得られた。当社独自の手法は、従来のスクリーニング法と比較して著しく広いダイナミックレンジを提供する。(B) 選んだ5種類の抗体はすべて、複数のAAVセロタイプに対して優れた結合親和性を示した。各候補の親和性はELISAにより検証した。陰性コントロール(NC)としてpMES4 B4ファージを使用した。
抗体の特性評価

図 3. 抗AAV VHH抗体候補の詳細な特性評価。各候補抗体をVHH-Fcとして再構築した。(A) BLIにより測定した各候補のKD値。2種類のVHH抗体はいずれも非常に高い結合親和性を示した。(B) EC50値の算出に用いた、AAV9に対する各候補の結合曲線。(C) In vitro中和アッセイでは、2種類のVHH抗体がAAV1の293T細胞への感染を効率よく阻害した。NC群には抗体を添加していない。IMSは免疫マウス血清、NCは陰性コントロールを示す。