AAVウイルス様粒子 (VLP)
AAVウイルス様粒子(AAV中空粒子とも呼ばれる)はウイルスゲノムを含まないAAVカプシドであり、AAVを利用した遺伝子治療開発の対照実験に使用されています。AAVウイルス様粒子はELISAやHPLCなどの解析におけるキャリブレーションおよび最適化に使用されるだけでなく、生体内分布解析や特定AAVセロタイプカプシドに対する生体内免疫反応の検定など、創薬プロセスの多様な用途に使用されています。弊社の既製品AAVウイルス様粒子は徹底的に特性評価されているため、信頼性の高いウイルス様粒子の品質評価基準試料として使用できます。さらに、AAVウイルス様粒子は実験で観察された現象がAAVカプシドに起因するものではなく、AAVベクターから発現される遺伝子に起因することを確かめるためのネガティブコントロールとしても利用できます。AAVウイルス様粒子はカプシドの構築過程およびカプシドタンパク質の翻訳語修飾を含む、AAVのライフサイクルにおける様々な側面を研究にとって欠かせないツールとなります。
特長
- In vivoグレードのAAVウイルス様粒子セロタイプ 1, 2, 3, 5, 6, 8, 9, 2-retroなどが即時出荷可能です。
- AAVウイルス様粒子のカスタムサービスとして、どのようなセロタイプ、生産システム、精製システムおよび品質要求事項にも対応できます。
- SDS-PAGE、BCA、エンドトキシン試験、マイコプラズマ検査、フル/空カプシド比解析などを使用した、徹底的な特性解析が可能です。
サービス詳細 プライスマッチ
*VP = ウイルス粒子、Virus Particles
AAVセロタイプごとのメジャーなウイルスキャプシドタンパク質1(VP1) シークエンスはここからご覧いただけます >>>>発送と保存
弊社のAAVウイルス様粒子はPBSを基にしたバッファーで保存され、ドライアイスとともに発送されます。受領後は長期保存の場合は‐80℃で(最低一年間は安定)、短期保存の場合は‐20℃(2~3週間)で保存してください。解凍したAAVウイルス様粒子は4℃で1~2週間保存できます。
技術情報
実験による検証
図1. 既製品AAVウイルス様粒子(セロタイプ1,2,5,8,9)のSDS-PAGE後の銀染色像
AAV VLPs
Conventional AAV
図2. セロタイプ8のAAVウイルス様粒子の電荷検出質量分析 (CDMS) 結果を、AAVウイルス様粒子(中空粒子/空粒子/Empty virus like particles)(左)と従来の方法で作製したAAVウイルス(右)で比較した。従来の方法で作製されたAAVウイルス(右)は、組換えAAVウイルスゲノムをパッケージしたフルウイルス(Full virus)のピークが通常4.50~4.75MDa付近にあらわれる(緑)。また、3.75MDa付近のピーク(黒)に空ウイルスがが認められるダブルピーク型となる。当社のAAVウイルス様粒子は、中空粒子のみを製造するため、3.75MDa付近に集中して局在する(黒)。フルウイルスはこの製造過程では産生されずピークは現れない。黒は中空粒子、 緑はウイルスゲノムを含むAAVを示す。
図3. セロタイプ9のAAVウイルス様粒子の透過型電子顕微鏡(TEM)イメージ。中空粒子や 空ウイルスは内部が黒く現れる。組換えAAVウイルスゲノムを含むフルウイルスでは、内部が白くなるが、このTEMイメージではウイルスゲノムが内包されたフルウイルスは現れない。
AAVセロタイプの組織指向性
自然界に存在する多くのAAV株は、ウイルス表面のカプシドタンパク質の抗原性によってセロタイプに分類されています。それぞれのセロタイプはウイルスに異なる組織指向性(組織への感染特異性)をもたらします。AAVベクターをウイルスにパッケージングする際には、カプシドタンパク質を選択することで様々なセロタイプをもつウイルスを作成できます。AAVセロタイプテストパネルは複数AAVセロタイプ間の組織特異性を系統立てて比較するために開発され、実験に最適なセロタイプを検討することができます。下記のリストにはそれぞれのセロタイプの組織特異性を記載してあります。
セロタイプ別
組織別
セロタイプ | 組織指向性 |
---|---|
AAV1 | 平滑筋, 骨格筋, 中枢神経系, 脳, 肺, 網膜, 内耳, 膵臓, 心臓, 肝臓 |
AAV2 | 平滑筋, 中枢神経系, 脳, 肝臓, 膵臓, 腎臓, 網膜, 内耳, 精巣 |
AAV3 | 平滑筋, 肝臓, 肺 |
AAV4 | 中枢神経系, 網膜, 肺, 腎臓, 心臓 |
AAV5 | 平滑筋, 中枢神経系, 脳, 肺, 網膜, 心臓 |
AAV6 | 平滑筋, 心臓, 肺, 膵臓, 脂肪, 肝臓 |
AAV6.2 | 肺, 肝臓, 内耳 |
AAV7 | 平滑筋, 網膜, 中枢神経系, 脳, 肝臓 |
AAV8 | 平滑筋, 中枢神経系, 脳, 網膜, 内耳, 肝臓, 膵臓, 心臓, 腎臓, 脂肪 |
AAV9 | 平滑筋, 骨格筋, 肺, 肝臓, 心臓, 膵臓, 中枢神経系, 網膜, 内耳, 精巣, 肝臓, 脂肪 |
AAV-rh10 | 平滑筋, 肺, 肝臓, 心臓, 膵臓, 中枢神経系, 網膜, 腎臓 |
AAV-DJ | 肝臓, 心臓, 腎臓, 脾臓 |
AAV-DJ/8 | 肝臓, 脳, 腎臓, 脾臓 |
AAV-PHP.eB | 中枢神経系 |
AAV-PHP.S | 末梢神経系 |
AAV2-retro | 脊髄神経 |
AAV2-QuadYF | 内皮細胞, 網膜 |
AAV2.7m8 | 網膜, 内耳 |
組織 | 推奨するAAVセロタイプ |
---|---|
平滑筋 | AAV1, AAV2, AAV3, AAV5, AAV6, AAV7, AAV8, AAV9, AAV-rh10 |
骨格筋 | AAV1, AAV9 |
中枢神経系 | AAV1, AAV2, AAV4, AAV5, AAV7, AAV8, AAV9, AAV-rh10, AAV-PHP.eB |
末梢神経系 | AAV-PHP.S |
脳 | AAV1, AAV2, AAV5, AAV7, AAV8, AAV-DJ/8 |
網膜 | AAV1, AAV2, AAV4, AAV5, AAV7, AAV8, AAV9, AAV-rh10, AAV2-QuadYF, AAV2.7m8 |
内耳 | AAV1, AAV2, AAV6.2, AAV8, AAV9, AAV2.7m8 |
肺 | AAV1, AAV3, AAV4, AAV5, AAV6, AAV6.2, AAV9, AAV-rh10 |
肝臓 | AAV1, AAV2, AAV3, AAV6, AAV6.2, AAV7, AAV8, AAV9, AAV-rh10, AAV-DJ, AAV-DJ/8 |
膵臓 | AAV1, AAV2, AAV6, AAV8, AAV9, AAV-rh10 |
心臓 | AAV1, AAV4, AAV5, AAV6, AAV8, AAV9, AAV-rh10, AAV-DJ |
腎臓 | AAV2, AAV4, AAV8, AAV9, AAV-rh10, AAV-DJ, AAV-DJ/8 |
脂肪 | AAV6, AAV8, AAV9 |
精巣 | AAV2, AAV9 |
脾臓 | AAV-DJ, AAV-DJ/8 |
脊椎神経 | AAV2-retro |
内皮細胞 | AAV2-QuadYF |
注文方法
リソース
関連技術情報
化学物質等安全データシート (MSDS) 品質検査証明書 (Certificate of Analysis, COA) カタログとフライヤーQ&A
弊社の既製品AAVウイルス様粒子は哺乳類細胞内で各セロタイプに対応したAAV cap遺伝子を一過性トランスフェクションによって発現させ、カラムクロマトグラフィーによって精製することによって生産されています。要望があれば、カスタムAAVウイルス様粒子をバキュロウイルス‐sf9細胞システムを使用して生産することもできます。
ベクタービルダーによって作製されたすべてのウイルス様粒子には様々な品質検査による徹底的な特性解析が行われます。SDS-PAGE、BCA、エンドトキシン試験、マイコプラズマ検査がすべてのAAVウイルス様粒子に対して実行されます。カスタムAAVについてはフル対空カプシド比(Full/empty)を決定するために、ご依頼に応じてTEM、電荷検出質量分析法 (CDMS) 、SV-AUCを提供しています。