どの蛍光タンパク質を使用すればよいのでしょうか? 

長年にわたって多くの蛍光タンパク質(fluorescent protein:FP)が開発されてきましたが、実験用途に応じた蛍光タンパク質の選択が必要です。

単色実験

単色実験では、緑色FPの選択が一般的です。緑色FPの中でもEGFPは最もポピュラーで、様々な単色実験に適しています。TurboGFP (別名maxGFP)はより明るい緑色蛍光、より速いタンパク質成熟、高pHにおける安定性および光安定性など、EGFPより優れた点があるためにシグナルを早くかつ高感度に検出する必要がある実験に適しています。赤色FPが必要な場合は、mCherryが単量体の蛍光タンパク質であること、優れた蛍光特性、および低毒性などの理由で選択されています。mCherryは特にタンパク質へのタグとして、さらに細胞が赤色FPの持つ細胞毒性やタンパク質凝集への感受性が高い場合に非常に有用です。dTomatoはmCherryよりも蛍光強度が高いので、二量体形成やある程度のタンパク質凝集が許容できる場合には選択のひとつになります。その他の赤色FPであるDsRed_Express2は細胞毒性を最小限に抑えられています。

複色実験

複数の蛍光色素 (FP、DAPIなどの色素も含む)を同時に使用する実験では、使用する顕微鏡、フローサイトメーター、他の検出機器の励起/吸収フィルターが対応しているか、蛍光色素の波長特性が重複しないかを考慮する必要があります。検出機器は実験に使用する蛍光色素のシグナルを、他の蛍光色素の干渉なく検出できなければいけません。そのためには目的の蛍光色素のみを励起する周波数の励起光のみを透過する励起フィルター(またはレーザー)を使用すること、さらに目的の蛍光色素から放出された蛍光のみが検出器に入るように吸収フィルターを選択します。2色蛍光検出の場合、EGFPのような緑色FPとmCherryのような赤色FPがほぼすべての蛍光顕微鏡やフローサイトメーターで使えます。3色蛍光検出の場合、青色、緑色、赤色のFPの組み合わせ(例:TagBFP + EGFP + mCherry)またはシアン(青緑色)、黄色、赤色の組み合わせ(例:CyPet + YPet + mCherry)がほとんどの蛍光顕微鏡やフローサイトメーターで利用できます。

蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)
蛍光タンパク質はFRET(fluorescence resonance energy transfer)にも利用できます。FRETは非放射性双極子相互作用によって励起されたドナー蛍光分子のエネルギーがアクセプター蛍光分子に遷移する現象です。FRETによってドナー分子の蛍光量の減少とアクセプター分子の蛍光量の増加が観察されます。FRETの前提条件は、ドナーとアクセプター分子は10‐100Åの距離にある、アクセプター分子の励起スペクトルはドナー分子の発光スペクトルと重なりあっている、ドナーとアクセプター分子の遷移双極子の向きは平行である、等が挙げられます。FRET効率はドナーとアクセプター分子間の距離の6乗に反比例し、分子間距離の小さな違いで効率は大きく変わるので、DNAもしくはタンパク質の構造解析や分子間相互作用の研究など多くの利用法がある強力なツールとなります。青色‐黄色のドナー/アクセプター分子のペア(CyPet-YPet)は良好なダイナミックレンジが得られるのでFRET実験で広く使われます。

ベクタービルダーのおすすめ蛍光マーカーセット:

単色: EGFP, TurboGFP, mCherry, dTomato, または DsRed_Express2 (核のDAPI染色と同時に使える)

2色: EGFP + mCherry もしくは TurboGFP + mCherry (核のDAPI染色と同時に使える)

3色(RGB): mCherry + EGFP + TagBFP または mCherry + YPet + CyPet (2番目の組み合わせは紫外フィルターを使うと DAPIも追加できる)

FRET用: CyPet - YPet

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