{[speechBalloon]}
期間限定・通年キャンペーン10-15%OFF
プレスリリース   |   Aug 28, 2024

細胞分化におけるgene occlusionによるlineage restrictionに関する新しい知見を発表

VectorBuilderとシカゴ大学を含む研究グループが、多細胞生物の細胞分化の決定過程にあるlineage restriction(系統制限)に関して研究結果を発表しました。「Mechanistic Basis of Lineage Restriction」(1) (系統制限の基礎メカニズム)と題されたこの研究は、多細胞生物の発生過程において細胞がalternative fates(代替運命)の可能性を永久に失うことによって、特定の細胞運命に次第にコミットしていくかについて、前例のないユニークなメカニズムの洞察を提供しています。

バックグラウンドとこの研究の主要な成果

Lineage restriction(系統制限)は、個体発生の過程にある細胞が、特定の機能系統に分化を進める過程で、他の細胞系統への分化能力を徐々に失っていくという生物学的現象です。この機能によって、個体内の多種多様な個々の細胞が、個体の全生涯にわたってその機能的同一性を忠実に維持できるようになり、多細胞生物のボディープランの維持機構の基礎メカニズムといわれています。しかしlineage restrictionに関してはまだ解明されていないことが多く、生物学における重要な未解決命題の 1 つです。シカゴ大学の研究グループは以前の研究 (2-6)で、lineage restrictionの過程で、転写因子による活性化能を失う遺伝子クラスを明らかにしました。そして発生の過程で、細胞が特定の細胞運命に徐々に分化するにしたがって、他細胞への分化能が不可逆的にocclusion(閉塞)される仮設を立てました。しかし、現在まで細胞運命能とゲノムの転写能を関連付けて説明できるocclusion(閉塞)の分子機構を示すことができていませんでした。今回の新な研究において、転写因子によって保護されていない遺伝子では、デフォルトではヌクレオソーム型へのクロマチン化だけでocclusion(閉塞)される可能性を発見し、さらに様々な分化能を持つ細胞の全ゲノムの転写能を体系的に分析した結果、分化過程にある細胞の分化決定能の低下とゲノムの転写能の低下を関連づけるメカニズムを明らかにしました。今回の研究における新な知見は以下の通りです:

1. 初期発生過程のNaïve 多能性幹細胞はゲノムの完全な転写能力を確立するためにocclusion(オカルジョン)機能をグローバルに消失させるde-occlusion(脱オカルジョン)能力をもっている。

2. Naïve細胞が初期多能性段階を進むにつれ、de-occlusion(脱オカルジョン)能力が消失(abolished)していく。この過程は、de-occlusion のコア因子であるEsrrbがocclusionされていくことで生じることが分かった。これ以降は、必要に応じで細胞分化を決定するために遺伝子はocclusionを受けていく。

3. Naïveステージを過ぎた幹細胞には、分化過程後期に転写の活性化が必要になってくる遺伝子もある。これらの遺伝子の分化初期過程での不活性化は、Sox2などの仮押さえ因子(placeholder factors;PF)によって、転写因子結合サイトが保護されている。

4.  分化が進むにつれて、決定された分化方向に関係のない不適当な遺伝子、特に細胞の運命を根本から代替させるマスターコントロール遺伝子は、転写因子(transcription factor: TF)や仮押さえ因子(placeholder factor: PF)が細胞から消失すると、デフォルトのクロマチン化作用を受け不可逆的なocclusionを受ける。 

これらのメカニズムは、Bruce Lahn教授らのグループが、以前仮説を立て“occlusis”(3)と名付けた発生プロセスが、lineage restriction(系統制限)をも引き起こし、それによってcis転写調節を保持するゲノムの部分が分化過程で次第に縮小し、発生過程にある細胞の分化運命変更能力も次第に狭められていく仮説をサポートしています。

この研究成果の位置づけ

この論文で発表された内容は、発生生物学、幹細胞研究、遺伝子制御、エピジェネティクスなどのさまざまな分野に広範な知見を与えます。細胞がどのように分化発生能力を失い、機能的に特殊化するのかをより明確に示すことで、発達障害、がん、老化などの病気についての理解が深まります。この研究のコレスポンディング著者であり、VectorBuilder のチーフサイエンティストのBruce T. Lahn 博士は以下の様に述べています、“私たちの研究は、多細胞生命体の発生を支える最も重要な制御機構のいくつかを明らかにしています。この理解により、治療の場面で細胞の運命を操作する新たな可能性が開かれます。”。さらに“occlusionの概念は、細胞の発生に関する新たな視点を提供し、生物医学研究に大きな進歩をもたらす可能性を秘めています”と述べています。

 

参考論文

1.  Mechanistic basis of lineage restriction. B. Wu et al., bioRxiv 2024.08.07.606262.

2. Systematic identification of cis-silenced genes by trans complementation.  J. H. Lee et al., Human molecular genetics 18, 835–846 (2009).

3. The “occlusis” model of cell fate restriction. B. T. Lahn, Bioessays 33, 13–20 (2011)

4. Evidence for a critical role of gene occlusion in cell fate restriction. J. Gaetz et al., Cell Res 22, 848-58 (2012).

5. Embryonic stem cells induce pluripotency in somatic cell fusion through biphasic reprogramming. K. M. Foshay et al., Mol Cell 46, 159–170 (2012).

6. Systematic mapping of occluded genes by cell fusion reveals prevalence and stability of cis-mediated silencing in somatic cells.  T. J. Looney et al., Genome research 24, 267–280 (2014).

 

VectorBuilderについて

VectorBuilder は、遺伝子デリバリー技術の世界的リーダーです。 VectorBuilder は、世界中の何千もの研究室やバイオテクノロジーや製薬会社の信頼できるパートナーとして、基礎研究から臨床応用まで、遺伝子デリバリーベクターの設計、技術開発、ベクター最適化のためのソリューションを提供しています。革新的なイノベーションである当社の Vector Design Studio は、研究者がオンラインでカスタム ベクターを簡単に設計して注文できます。ベクタークローニングとウイルスパッケージングという単純作業から研究者を解放することで、研究者はもっと独創性の高い重要な研究に時間を使うことができます。当社はハイスループットのベクター生産能力、膨大なベクター バックボーンとコンポーネントのストックで基礎研究を支援し、さらに高度な AAV キャプシド エンジニアリング開発などを含む 1 対 1 の CROサービス、最先端の核酸ウイルスの cGMP製造施設をもっています。最先端の研究開発と CDMO 製造能力を備えた VectorBuilder チームは、最も効果的な遺伝子デリバリーソリューションを皆さまに提供し、ライフ サイエンス研究と遺伝子医学のための新しいツールの開発を支援します。

Please let us know what you would like to hear from us about the latest technologies or discoveries by leaving feedback or contacting us.
マイベクターをデザインする デザインサポートを依頼する